赤は先を賭し、黒は過去を賭ける
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そうして、城壁の前の兵士達はどうにか纏まっていた心をかき乱されて烏合の衆に成り下がる。手の届かない場所に敵がいるのだから、逃げるしか出来ない。
東側と同じく西側も……曹操軍は圧倒的な優位のまま敵を下がらせた。
†
降り注いだのは異常な物体。石以外は来ないと多寡を括っていたのが間違いであった。
よくよく考えれば分かる事だ。何も石だけを飛ばさなくていい。飛ばすなら、なんでも飛ばせばいいのだ。
矢の雨なら防ぐのは容易いが……さすがに槍の雨を降らされては対応が難しかった。
大きな石が飛ぶのは他の場所。自分達よりも後方に向けて、敵は石を飛ばしてきていた。
連射が効かないのか二の物は遅いが、それでも大きな質量の投擲は脅威でしかない。
あたしと斗詩には特に多くの槍が降りしきった。逃げるか行くか……考える方が愚かしい。この官渡を攻めるのは現時点では不可能だったのだから。
秋兄は何もしなかった。だからこっちも何もしないでおいた。城門が焼けて、何故か前に倒れても突っ込ませずに待たせた。
こちらの兵器の槍に余りがあるからと、不審な所に打ち込んでみたのだが……そこからあの事態は始まった。
纏まらせれば石。ばらければ槍。兵士達までは守れないし、敵に攻撃を加える事も出来ないから被害が増えるばかり。
敵の兵器は分かった。威力偵察の効果は確かに得られた。だから……後は下がってじっくり対策を練ればいい。
全ての兵士に撤退を命じ、届かないであろう範囲まで軍を下げた。
こうして膠着すれば敵に為す術はない。城の防衛側に出来る事は攻めてきた相手を押し返す事だけなのだから。
出て来るなら来て欲しい。野戦になれば、こちらの“もう一つの秘密兵器”を存分に使える。そうなれば兵数をより多く下げられる。
ただ、夕の予測では出て来ない、とのこと。大型強弩でも揺るがないなら、彼女の本来の予定を進もうか。
「……怖かったぁ」
震えながら、斗詩は兵から離れた所であたしに零した。
やっと緊張が解けたのだろう。疲労感が濃い顔からは、どれだけ張りつめていたのかが見て取れる。
兵達と同じように安堵出来る彼女に、少しだけ羨ましさを感じた。
「三つに振り分けた分、死傷者合わせて一万越えてるってさー」
「そんなに……なんだ」
「西側の火が一番被害が高かったらしいよ? でもホントに痛いのは擬似死兵に仕立て上げたモノが全部ぱぁになっちゃった事かなー」
兵達に城攻めの気概はほぼない。攻める側の方が不利なのは攻城戦で当たり前だが、さすがに普通の攻城戦すら出来ないとなれば論外。
作ろうとしていた擬似死兵は、敵が優位な状況を打破する為の燃える執念を持たせられたわけではない。生き残る事を最
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