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『もしも門が1941年の大日本帝国に開いたら……』
第四十四話
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 ハミルトンはそう反論するが元老院議員達も負けずと反論し、場は乱戦になっていた。

「そもそもだ。それならニホン側に犯人の引き渡しを求めてはどうかね?」

 軍部出身のクレイトン男爵の言葉にハミルトンは胸中で舌打ちをした。

「ニホン側は彼等を庇護すると回答して参りました」
「ほら見ろ!! 奴らはニホンと繋がっていたんだ!!」
「モルト皇帝が翡翠宮に外交特権を付与されたのは使節達との講話交渉を円滑に進めるためであって敗北主義者達を匿わせるためではないぞ!!」
「外交特権を停止するのだ!!」

 ヤジが怒号のレベルにまで高まり収拾がつかなくなってきた。

「我等はこれ以上の被害は出したくはない。無益な戦いで血が流されるのはこりごりのはず。殿下のご指示とあらば騎士団も守りを解くはず。いかがでしょう殿下? ここはお譲りいただきませんか?」

 ウッディ伯爵がそのように申してきた。ハミルトンは反論したが、ウッディ伯爵は吐き捨てた。

「我々は貴女に聞いていない。ピニャ殿下に尋ねているのです」
「そうだそうだ!!」
「大体秘書官風情が何故答弁しているのだ? 僭越だぞ!!」

 口ごもるハミルトンだったが後ろからピニャが口を開いた。

「もういいハミルトン。妾は帰る」

 ピニャはそう言って席を立ち、帰ろうとする。その行動に議員達はヤジを飛ばすがピニャは気にする気はない。しまいには騎士団を解散しろと脅してくるが、ピニャはフンと笑った。

「騎士団とニホン軍に負けているのは何処のどいつだ? 此処で議論せず翡翠宮に突撃したらいい。まぁ死ぬがな」

 ピニャの言葉に議員達は激怒したが、そこに今まで沈黙していたゾルザルが口を開いた。

「ニホンと講話交渉を打ち切るつもりはない。政情が安定しない上安全も確保出来ぬ故に一度ご退去いただくのだ。生き帰りの安全は俺の名で保障する。政情が安定した後に再び翡翠宮にお越し頂くのだ」

 ゾルザルの提案に議員達は賛同しているが、ピニャはゾルザルに一言言った。

「もう兄上の好きにすればいいのです」

 ピニャはハミルトンすらも見捨てるように皇太子府を後にした。ハミルトンはピニャを追いかけようとしたが、ゾルザルに呼び止められた。

「そなたは婚約者を失いニホンを恨んでいるはず。今なら僅かではあるが一軍を預けて最後の攻撃を敢行してくれぬか? 何せ講話交渉は一つでも有利な状況が欲しいからな」

 ゾルザルの言葉にハミルトンは心臓が鷲掴みされた感覚を覚えた。先程まで私情は切り捨てていたが、ゾルザルに促され議員達も攻撃に参加しろと言われ奥にし舞い込んでいたドス黒い感情が湧き出してきたのである。
 そしてハミルトンはゆっくりと口を開いた。




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