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『もしも門が1941年の大日本帝国に開いたら……』
第四十四話
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 翡翠宮で戦闘が続いていた一方、皇太子府では皇女ピニャが半数以下に減った元老院議員達からの糾弾の嵐に晒されていた。
 その理由というのも翡翠宮で戦死した帝権擁護委員(オプリーチニキ)の多くが主戦論派である彼等の子弟、若しくは縁者だったからだ。

「皇女殿下は元老員院の権威をなんと心得ておられるのか!?」
「さよう。我等がどれほどの思いでオプリーチニナ特別法を可決したのか御理解下さってない!!」
「その通りだ!!」

 議員達はピニャに向けてこれでもかとばかりにヤジを飛ばしていた。対するピニャは黙したままである。どんな罵声でも言い返すをしない。
 ピニャの精神は皇帝の不豫に始まった事態の悪化の兄ディアボから見捨てられた事で不安定な状態だった。ゾルザルに対抗してもらおうとディアボに助けを借りようとしたが、従者のメトナスを失っていたディアボはピニャの言葉に耳を傾けず、そのまま帝都を脱出して何処かへと去って行ったのだ。
 ある目撃情報ではイタリカに向かったとか言われているが定かではない。そのためピニャはボケェっとしていたが、味方がいないわけではない。
 漸く公務に復帰したハミルトンが独りではあるが側にいて懸命に立ち向かってくれた。それでも時折、ハミルトンは人目が付かないところで泣いていた。樹に怨みを呟いて……。

「議員方、殿下の理解力が不足しているかのように言わないでいただきたい。殿下は理解なされている。ただ許容ならないだけなのです」

 ハミルトンは何とかピニャを守ろうと論戦に打って出ていたが、既に満身創痍の状態である。

「それを理解力の不足だと申し上げている。我等も何も好き好んでこのような法律を可決したわけでないのですぞ。断腸の思いを堪えたのです」
「フン、理解出来さえすればそれを許容するというのは妄想でしかありません。理解してもなお許容出来ないという事は幾らでもあるのです。自らの主張が許容されないからといってその理由を理解力不足に貶めようとするのはただの我が儘です」
「何と無礼な!! 貴女は妄想だと仰るのか!!」
「我が儘なのは殿下の方であるぞ!!」

 ハミルトンの反論に議員達は罵倒して口を閉じさせた。そして主戦論派の急先鋒たるウッディ伯爵がつけこんできた。

「兎に角殿下には翡翠宮に逃げ込んだ者共を帝権擁護委員部に捕らえさせることへの同意を願いたい」
「それは無理だと申し上げた。翡翠宮は皇帝陛下の勅によって外交特権が付与された使節の逗留の場であり帝国の法が及ばぬところです。そして我等はそれを守る楯。元老院議員の方々にこそ問いたい。使節の方々の安全を脅かそうとする帝権擁護委員部の行為を認めているのですか? 彼等の為していることこそ皇帝陛下の権威と帝国の名誉を貶める帝権干犯そのものではないですか!
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