第7話 壊レタル愛ノ夢(後編)
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らずに避ける人だからね。Q国にいた頃だって、人体実験とかいろんなことで手を汚しきる前にさっさと日本に帰国したくらいだからね。強羅木君はそういう人だからね」
思わず顔を上げると、伊藤ケイタがいた場所、そこにはふわふわとミニパネルが浮いていて、
「向坂君と明日宮君は、そして僕も結局、Q国に残って、ひどいことをしたからね。しなきゃならなかったからね」
画面に赤いアルバムの表紙が写る。
「君には僕が、ただのお人好しそうなおじさんにでも見えるのかい?」
ページが一枚めくれ、どこかの建物の廊下の写真が現れる。
「向坂君がただの気の弱そうなおじさんに見えるかい?」
人が、瓜のようにごろごろ転がっている。赤い奇妙な模様の服を着ている。違う。血で汚れた白衣だ。
「明日宮君のことを桑島君からどう聞いたのかな。あの動画を見て、どう思ったのかな。快活で、人望のありそうな、正義感の強そうな人だとでも思ったのかな」
ページがめくれる。
コンクリートが写っている。そのコンクリートには人の衣服が敷かれている。汚れたシャツと、上着とスラックスと、ご丁寧に靴まであって、でもよく見たら服が並べてあるのではない。コンクリートに血と髪がこびりついていて、人間の肉だけない。
「僕たちは人が戦車で轢き潰されていくのを見た」
ページがめくれ、
「僕たちは武装していない、ただ生まれた国が違うだけの人間が、同業者が、自分たちの研究を守ろうとして殺されていったのを見た」
破壊された電子機器が散乱する部屋。
天井まで血まみれだ。弾痕とともに、肉の断片が壁にこびりついている。
「僕たちはそこに入って行って彼らの研究内容を盗んだ」
ページがめくれる。
「僕たちはそこでご飯を食べて、寝て、生活していた」
右手に銃を持ったまま、側頭部から血を流して仰向けに倒れた女が写っている。
「僕たちはそこで電磁体の人体実験をしたよ」
中が檻で仕切られた実験室が写る。
「他人の人格や記憶を移植された人が、自分の人格を崩壊させていく課程を研究したんだ」
その実験室で、痩せこけた被険者が泣きながら、汚物を床になすりつけている。
「だから明日宮君は死んだんだよ。殺されたんだよ。復讐されたんだよ。戦争っていうのはこういうことなんだよ。戦争は事象じゃないんだ。人間そのものを戦争にしてしまうんだ。これが僕たちなんだよ。僕たちは戦争なんだ」
『なんだ』
その声に重なって、もう一つの伊藤ケイタの声が聞こえる。
クグチはぼんやり口を開けて、目の前にあるものを見極める。
それは伊藤ケイタ本人で、惨たらしい写真ではない。
「大丈夫かい? 疲れてるのかな」
「何……ですか?」
「その海浜公園のことが、強羅木君たち三人が一番楽しそうに話してた思い出なんだ、って言ったん
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