第7話 壊レタル愛ノ夢(後編)
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養子に会いに行くつってんのに、認めやがらないからだ。普通認めるとこだろ」
「だからって」
「しょうがねえから辞表を叩きつけてやった。受理するのもしないのもお前らの勝手だが、いずれにしろ俺は道東に行くってな」
「信じられない。これからどうするんだ。再就職のあてはあるのか?」
「お前が心配することじゃねえ」
と、真顔に戻り、
「お前、桑島のことで何を知っている?」
鋭い目でクグチを射抜いた。
「向坂のこともだ。ここで何があった。全部話せ」
クグチは観念して、強羅木と向き合う形で椅子に座った。彼に隠し事をしたところでメリットは何もない。南紀でハツセリと会ったことから、伊藤ケイタの話の内容まで、全てを打ち明けた。
「桑島の人格を補完するためにお前を利用しただと? ふざけやがって」
強羅木は顔をしかめる。
「そんなことをして何になる……なぜそんなことをする必要があった? 興味本位か? 単に知りたかったのか?」
「今思ったんだが」と、クグチ。「向坂さんには理由があると思う。もし桑島さんの人格が完全に、あるいは完全に近い形で補完されるなら、同じことをルネの守護天使でもできる」
「あの馬鹿野郎……。誰にどうやって息子の守護天使を移植するつもりだったんだ」
強羅木は立ち上がる。
「向坂を探しに行く」
うなだれていたクグチは、顔を上げた。
「どこに探しに行くんだ?」
「あいつと何年つきあいがあると思ってる。思い当たる場所なら幾つもある。お前はここにいろ。動くな。あいつは危険だ。接触するな。何を考えているかわからん。次会ったら、逃げろ」
「それは大袈裟じゃないのか?」
強羅木は厳しい顔をし、答えない。
「待ってくれ」
「何だ」
「何故俺にあさがおのことを黙ってたんだ?」
強羅木は口を小さく開くが、答えない。
「何故なんだ?」
「……聞いてどうする」
「教えてくれ。どんな理由でも俺は知りたい。教えてくれたら俺はあんたを信用する。ここから動かない」
逡巡が彼の目の中をさまよい、目を伏せ、強ばった顔がゆるむ。
「彼女はお前のことを忘れたがった」
「何故」
「彼女にとっては病んだ母親の存在だけでも充分な負担だった。その上幼すぎる弟まで背負いこむなど無理だった。お前がどこか遠くで、家族の姿を知らずに生きることを彼女は望んでいた。だからだ」
「そうか」
クグチは深い失望を抱え、頷いた。
「わかった」
「出歩くな」
育て親はドアノブに手をかけ、振り向いた。
「一つ言っておく」
「何だ」
「俺にとって、お前が負担だったことは一度もない。……忘れるな」
ふいと顔を背け、ただ一人の家族は、出て行った。
彼を、一度だって心から父と呼んだことがない事実を、クグチは思った。
部屋を出れば、彼に
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