第7話 壊レタル愛ノ夢(後編)
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自転車を押して帰る途中、予期せぬ人物と会う。
「マキメさん」
万乗マキメは口いっぱいに屋台の焼きそばを詰めこんだ状態で、「あ、明日宮君」と応じる。
「明日宮君も座れば。飲もうよ」
「何やってるんですか、こんなところで」
「それは君も同じでしょ」
「いや、お酒はやばいっすよ」
「いいのいいの。あ、おじさん、ビールと焼きそば追加ね。塩焼きそばとソース焼きそばどっちがいい?」
と、屋台の隣の椅子を勧める。
「じゃあ塩焼きそばください。ビールはいいです、麦茶で」
「飲めって飲めって」
「あんま強くないんですよ。勘弁してください」
自転車を屋台のテントの横につけた。
「なんかね、もうバカみたいでさ」
クグチが椅子に落ち着くなり、マキメはしゃべり始める。口の横にビールの泡をつけ、頬も耳も赤く、既に酔っている。
「何がですか?」
「岸本さんのことだよ。何あいつ」
「どうしたんですか?」
「星薗も島も、もうやる気ないだろうって。島君も使いものにならないだろうって」
「使いものに?」
朝、泣きながら走っていた島の姿を思い出す。
「島君の働きがあいつの期待通りじゃないのも、明日宮君があいつにとって生意気なのも、ぜーんぶあたしの新人教育が悪いからだってさ」
「そんなことは」
「はいよ」
目の前に塩焼きそばと麦茶が置かれた。箸をつけた。予想以上に塩辛かったが、長い距離を歩いて汗をかいた後にはちょうどよかった。
「そんなわけはないと思いますよ。絶対言いがかりですって。岸本さんの。少なくとも俺が生意気なことに関しては」
「だよねー。そんなの絶対あたしのせいじゃないよね!」
「……なんかすいません」
「あたしあんな奴大っ嫌い」
と子供のような愚痴を言いながら、ビールを追加で注文する。
「俺だって好きじゃないですよ。ああいう変にプライド高い人」
「あんなのはねぇ、プライドが高いって言わないのよ。コンプレックスが強いのよ」
「なるほど」
「あの人もともと、守護天使を持ってた側の人だからね。うちらのまとめ役なんて、やってらんないんでしょ」
クグチはマキメの横顔を見た。
「そうなんですか?」
「学生の時、事故でね、UC銃を浴びたんだってさ。出動中だった特殊警備員の。それから性格が変になっちゃったんだって」
知ったこっちゃないけど、と付け加える。
適当に愚痴を聞いて寮に戻ると、部屋に鍵がかかっていない。
戸を開け、クグチはビクリと震え、立ち竦んだ。
「よう」
育て親、強羅木ハジメがベッドに座っていて、目が合うとニタリと笑った。
「なんで」クグチは首を横に振る。「なんであんたがここに。仕事はどうしたんだ」
「辞めてきた」
こともなげに彼は答えた。
「道東にいる
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