1部
21話
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
単純に考えれば光速で移動する忍術という事になるが、それは違う。
仮に先ほどの攻撃が光の速度で動くというのなら、先程の攻撃では私の体は消し飛んでいただろうからな。
そこで仮定一、彼の動きは光速ではなく私が認識できないギリギリの速度での攻撃である。
仮説二、体の性質を光のようなものに変化させて自らの重さを限りなくゼロにする。その上で私に接触する寸前で実体化している。
では仮定の検証だ。私の周囲を覆うように弁財天をある程度の厚さで展開する。仮に私の捕捉できない速度で動いているのならば、その速度でこの厚さの水に衝突した時に幾らかダメージを負うだろう。
「成る程、捉えられないなら全方位の防御を……ですが、その程度の水に防がれるほど僕は非力ではありませんよ」
彼は私の弁財天を防御用と判断したようで、そのまま素直に後ろの鏡から千本を構えて来た。
どうやら投擲ではなく本体がそのまま突っ込んできたようで、今度は私の耳に僅かに切り傷ができたが……微かな呻き声が弁財天の水が破られた瞬間に聞こえたな。
正解は仮説一のようだな。とはいえ、ネジにやられら腕に与えられたダメージがあった上での呻き声だろうし、私の想像よりは速くないようだ。
よって、速度は本当に私が認識できないギリギリの速度のようだ。その上で鏡から鏡の移動しなければならないという制約を考慮すれば、一つの鏡から私を攻撃しつつ移動することができる移動先はおよそ六枚。目指す鏡を当てられればその直線上に立つだけで、彼はこちらに勝手に突っ込んでくる。
理由は彼の攻撃は二度受けたが、彼はどうにもこの能力を完全には扱い切れていないようだからな。あの速度はどうやら彼自身対応出来ていないようで、殺すと宣言したにも関わらず私の傷のように致命傷には程遠い傷しか与えられない事から、取り敢えず千本を構えて雑に振るっているといった所だろう。
しかし、賭けとしては六分の一というのは些か分が悪いな。彼が鏡の中という珍妙な状況でなければ眼で読めたんだが……今現在私が見えるのは彼の正面のみ。予測の精度は格段に落ちるので精々六分の一を四分の一にするのが手一杯だ。
さてどうしたものか…………ふむ、雑な戦いというのも悪くないな。
私は両腕に蓬莱の枝を持ち一気に彼のいる鏡に枝を右腕で振り下ろした。
「そんな棒切れで割れる程、僕の鏡は脆くはありませんよ?」
「それは結構、だからこそ割れるんだよ」
蓬莱の枝は対象が硬ければ硬いほどにその効果は大きくなり対象を確実に打ち砕く、ただ硬いものを破壊するためだけに作り上げた忍具だ。彼ご自慢の鏡であるというのならば、尚更に砕けやすいだろうよ。
彼は驚きながらも別の鏡に移り、ついでに私の背中に何本か千本を刺していった。
…………傷は深く無いんだが、痛みは割とあるのだな。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ