第一部
第三章 パステルカラーの風車が回る。
リー
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病院を土台から揺るがす振動。徐々に晴れていく土ぼこりの中、視界に入ったのは体に纏った砂の鎧にたくさんの亀裂をいれた我愛羅の姿だ。大きく割れた地面の中心で、我愛羅が横たわっている。はあ、はあ、と息を乱しながらリーは一応は勝てたようだと、一安心して胸をなでおろした――
ぱら。
歓声をあげかけたいのとサクラが言葉を失い、ナルトたちが目を見開く。
ぱら、ぱら、ぱらら。
我愛羅の頬が、耳が、頭が、体が、指が、ぼろぼろになって崩れ落ちていく。ひゅう、と風が吹き、視界に入ったのはもう形を成さない我愛羅の姿。――リーが地面に落としたのは、我愛羅の形をした砂の塊でしかなかったのである。形を失った砂の抜け殻が、大きくひび割れた地面に吸い込まれていく。
「リー、後ろだ!」
不意に聞こえた叫び声は、病院の前の屋根の上だった。白眼を発動したネジがそこに立って後ろを指差している。咄嗟に振り返った先で盛り上がった砂の塊の中から、我愛羅の殺気に満ちた瞳が目に入る。残虐な笑みが目に入る。
我愛羅が印を組んだ。と同時に砂が彼の足元を旋回し始め、ついで四方八方へと空に向かって飛んでいく。そしてその砂は一斉に、術の反動で思うように動けないリーを吹き飛ばした。なんとか立ち上がろうとするも、表蓮華を使ったばかりの所為か足に力が入らない。振り向けば我愛羅は再び印を結び、砂がまるで波のように競りあがった。
「逃げろぉおおお!」
ナルトが叫ぶ。しかし間に合わなかった。砂の浪はいとも容易くリーの体を掻っ攫い、病院の壁に叩きつける。うめき声を上げながら崩れ落ちたリーを、残虐な笑みを浮かべた我愛羅が見つめている。とうとう目を覚ましてしまった彼の中の魔物が、リーを殺せ殺せと囁いている。砂の攻撃が、再度リーを襲った。
「我愛羅のやつ……完全に遊んでやがるっ」
カンクロウとテマリがその光景を目にして呟く。我愛羅がぺろりと舌なめずりをした。愉しんでいる。戦闘を。リーを攻撃することを。そしてその先に得られるであろう血と死を、望んでいる。
「リーさんなんで避けないのよ!? リーさんのスピードならあれくらいっ……」
「……いーや。恐らくあのリーって奴は、さっきの技の反動で避けられなくなってるんだ。この技は幻術や忍術じゃなくて、体術だ。生身であんな高速移動を繰り返すのは、人体にとって負荷が多すぎるんだろうよ。……しっかし、あいつらなんて野郎だ……!」
サクラが悲痛な声をあげ、シカマルが冷静にリーを分析する。病院の外壁には窪みができていた。両手を前に突き出し、なんとか急所を守ることに成功したらしいリーが、はあはあと荒い呼吸を繰り返す。砂の大波が再び襲った。
上に飛び、下に転がり、後ろに跳ね、なんとか砂を避ける。細かい砂の粒が我愛羅の周りを羽虫のよう
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