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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
追憶  〜 帝国歴486年(前篇) 〜
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うだな、少佐」
ヘルトリングの問い掛けに少佐は“はい”と答えた。

「事件後ですがヴァレンシュタイン中将はミューゼル艦隊の司令部を訪ねています。但し、ミューゼル提督が居ない時を見計らってです」
「……それは、意味深だな」
「はい、そして中将は参謀長のケスラー少将、そしてロイエンタール少将と会っています」
「なるほど、益々意味深だ」
事実確認をした、少佐はそう判断している。同感だな、となると問題は今後の動きだな。

「他に報告は?」
「いえ、現状では特に有りません」
「……」
「この後の御指示を頂きたいと思います」
当たり前の事を聞くな! こいつは状況が分かっておらん! やはり転出させるか。

「ヴァレンシュタイン、ミューゼルの二人から目を離すな。どんな些細な事でも動きが有れば報告しろ、以上だ」
二人が“はっ”と答え敬礼して部屋を出て行った。全く、あの阿呆、使えそうで使えん。苛々する。

ヘルトリングは何も分かっておらん。分かっていれば指示を頂きたい等という事は有り得ない。おそらくは私がヴァレンシュタインに不快感を抱いている、ミューゼルに不快感を抱いている、その程度の認識なのだろう。個人レベルの嫌悪、そう思っているに違いない。確かにあの二人には面白くない感情は有る。特にヴァレンシュタイン、あれには手酷く顔を潰された。

だがそれだけであの二人を敵視しているのではないのだ。ミューゼルは危険だ、ヴァレンシュタインも危険だ。それ以上に両者の連携は危険だ。いずれ簒奪を目指すのではないかと思われる野心家とそれを支える政戦両略に有能な参謀。これが危険でなくて何が危険だと言うのだ? ヘルトリングはそれが分かっていない。

そして帝国はかつてない危機的な状況にある。皇帝フリードリヒ四世陛下の健康状態は良くなく後継者問題で帝国は揺れている。ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯、リヒテンラーデ侯、三者が三竦みの状態で睨み合う中で当然だが軍の存在、影響力は極めて大きいものになった。その特殊な状況下であの小僧が軍内に力を伸ばしてきた。そして誰もがそれを認めざるを得ない状況になっている。ミューゼルに宇宙艦隊を掌握させれば簒奪への道筋を作るのは必ずしも難しくは有るまい。武勲を上げさせれば良いだけだ。そして認めたくない事だがミューゼルにはそれを為すだけの器量が有るようだ。

あの小僧、そのためにミューゼルをミュッケンベルガーに推薦しケスラー達有能な男達(特に彼らが下級貴族、平民というところが重要だ。彼らは既得権力階級ではない、簒奪に容易に賛成するだろう)を配下に押し込んだと見ていたが……。どうやら両者の間には溝が有るようだな。最初から殺すつもりだったとは思えん。階級は下でも実力は同等以上、その事にミューゼルが反発したのだろう。その溝が思いも
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