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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
追憶  〜 帝国歴486年(前篇) 〜
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そんなに緊張するな。
「はっ。元帥閣下も御存じかと思いますが先日のヴァレンシュタイン中将襲撃事件、その直前にベーネミュンデ侯爵夫人に関して或る噂が流れました」
「うむ」

〜ベーネミュンデ侯爵夫人とコルプト子爵が密かに情を通じている。事態を重視した皇帝は「皇帝の闇の左手」であるヴァレンシュタイン中将を使って事実関係を確認するだろう。貴族に対して非好意的な中将がどのような結論を出すかは言うまでもない。二人の運命は決まった〜

「そんな噂だったな」
確認すると少佐が頷いた。
「はい、ですが元々はベーネミュンデ侯爵夫人とコルプト子爵が密かに情を通じている、それだけの噂でした」
「……」

「その噂を流したのはリヒテンラーデ侯とヴァレンシュタイン中将だと思われます。おそらくはベーネミュンデ侯爵夫人とコルプト子爵を押さえつけるためでしょう。グレーザー宮廷医からの手紙でその必要があると御二方は判断したのだと思います」
「……」

あの二人、陛下御不例より密接に繋がっている。襲撃されたヴァレンシュタインを救出したのがリヒテンラーデ侯だった、少佐の言う事は十分に可能性が有る。おそらくは妙に噂が捻じ曲がったのでその善後策を検討した、そんなところか。だが侯爵夫人達にとっては自分達を始末するための打ち合わせ、そう見えたのだろう。それで襲いかかった。

「しかし噂は膨らんだな。尾ひれはひれが付いた、そういう事かな、少佐」
「いえ、偶然ではなく何者かが故意にヴァレンシュタイン中将を結びつけた、そしてそこに皇帝の闇の左手を付け加える事でベーネミュンデ侯爵夫人とコルプト子爵を追い詰め暴発させたのではないか。情報部ではその可能性を探りました。少々鮮やか過ぎます」

「うむ、あの二人を暴発させるために仕組んだ、そういう事か」
「或いはヴァレンシュタイン中将を謀殺するために故意に噂を捻じ曲げたかです」
「なるほど、有り得る話だな。あの男も敵が多い」
情報部というが気付いたのはこの若者かもしれん。自分の名前を出すとヘルトリングが嫉妬すると思ったか。だとすればなかなか使えそうな男だ。

「噂の出所を追いますと一人の人物に行きつきました。オスカー・フォン・ロイエンタール少将です」
「ロイエンタール? ……待て、少佐。その名前は……」
私が問い掛けると少佐が頷いた。

「はい、ロイエンタール少将はヴァレンシュタイン中将の推薦でミューゼル大将閣下の下に配属され分艦隊司令官を務めています」
「そうだ、確かミッターマイヤー少将を助けるためにヴァレンシュタインに助けを求めた、そうだったな」
「はい、その通りです」

思わず唸り声が出た。ヘルトリングが得意げな表情をしたのが不愉快だったがそれ以上に驚きが有った。そんな事が有るのか、事実ならあの事件の
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