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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
1部 Aincrad:activation
序章
はじまり
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長を僅かに抜かれ、言い知れぬ敗北感が心の片隅にこびりついて離れないが、この際つまらないプライドはかなぐり捨ててしまおう。


「ありがとう燐ちゃん!」
「リアルの呼び名出すな」


 ただの水で目を輝かせるクールビューティに水を押し付け、片手剣を鞘に戻す。
 それにしても二人だけだから良いが、街中で本名で呼ぼうものなら折檻だな。もしやらかしたらこの辺りで一番キツいダンジョンにソロで探索させよう。それがいい。


「はわ!? ごめんなさい、スレイドさん!」
「いきなり敬語使うんじゃない」
「うぅ、だって、外国の人みたいな名前だし、慣れてないし………」
「お前のが顔変わり過ぎだわ。俺は測定したキャリブレーションのデータをそのまま反映してるから変わったのは名前だけだってのに」


 相方を窘めつつ、俺も近くに腰を下ろす。
 この付近のモンスターは粗方狩り終えてしまったので、湧出(ポップ)を待つのにも丁度良いと自己完結させる。他の狩場に行きたいという本心は、そこで狩りをしているであろう他所様への配慮という尤もらしい理由で溜飲することにした。


「………あ、みてみて。あの人すごいよ! 燐ちゃんみたいだよ! 上手だね!」
「ああ、あれは《慣れてる》奴の動きだな」


 話題はエキセントリックな方向転換を見せ、やや離れた場所で狩りをする黒髪のプレイヤーへと移る。
 相手にしているのは俺たちと同じフレンジー・ボアだ。あちらは俺みたいなカウンターを狙うのではなく、最低限の回避を交えながら攻撃モーションの開始前と終了後の硬直時間を狙っての攻撃。初歩的ではあるが確かに洗練された動きは戦闘慣れしている印象を受ける。


「あの人、お腹大丈夫かな………」
「一応、痛覚は遮断されてるからな」


 そして、慣れないうちは手痛い洗礼をもらうこともしばしばある。無駄のない動きでモンスターを狩る黒髪の男性プレイヤーの傍らで、股座に突進の重い一撃を受けた赤い髪の男性プレイヤーをみたヒヨリは心底不安そうに見守っている。同じ男として、あれには同情せざるをえない。
 ……となると、あれはベータテスターが初心者にレクチャーしているのだろう。離れている為に会話は聞き取れないが、それなりに楽しそうにやっているようだ。


「やっぱり、燐ちゃんと同じべーたてすたーって人なの?」
「だろうなぁ。意外と近くにいるもんだ」


 確か初期出荷分の一万台は瞬時に完売したらしい。そういった意味ではこの天然へたれが如何にしてその激戦の勝者となったのかは気になるところであり、目下の話題よりも気になる論点ではあるが、それはいつか別の場所で聞くこととしよう。
 さて、ベータテスター自体が現在SAOをプレイしている一万人に対して千人、十分
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