乱れ混じる想いに
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か月前とほぼ同じ。徐州で一緒に策を練って、煮詰めて、兵達を励まして……あの頃となんら変わらない事を自分達はしていたのだと、月だけは気付く。
それが嬉しくて、哀しかった。
「……そうだな、お前達皆が作ってくれたモノだった。すまない、月」
申し訳なさげに秋蘭が目礼を一つ。
ハッとした月は、慌てて両の手を胸の前で振った。
「い、いえ、私はあまりお役に――」
「んなこたない。月のおかげで皆の笑顔が増えた。胸を張っていいんだよ」
「うむ、私も皆も、月の世話になっているからな。ありがとう」
遮られ、泣きそうになった。
二人に笑い掛けられればじわじわと顔が赤くなって、
「へぅ……」
いつもの口癖が漏れてしまった。
「徐晃、頭は撫でるなよ?」
「おっと、危ねぇ」
「はぁ……お前のソレは病気に違いない」
「……自分でもそう思う」
いつも通りに月の頭を撫でようとした秋斗に向けて、秋蘭は呆れたようにため息を一つ。一応、月が雛里への罪悪感に苛まれ過ぎないように咎めて止めたが、他人の色恋沙汰に深く首を突っ込むのは御免だとこれ以上はやめておく。
ただ、月は少しばかりしゅんと落ち込んでいた。彼女の内に育つ恋心は抑えがたいモノに育っているが故に。
聡く読み取った秋蘭が目を細めて、話を変えようと秋斗を見据えた。
「……それだけ切り替えられるなら私が出て来るまでも無かったか」
「んなことねーよ。妙才のおかげでもっと気を引き締められた。ありがと」
「ふふ、どういたしまして。だが引き締め過ぎるのも良くないぞ?」
「クク、なら酒でも飲みたいね」
「馬鹿者め、霞ではあるまいし却下だ」
残念、と軽くおどけて彼は外を見るのを止め、両手を頭の後ろに組んで振り返り、歩みを進める。
「さ、そろそろ最後の軍議をしに行こうかね。ゆえゆえ、怪我人達に振る舞う料理、今日は任せるよ」
「分かりました」
やれやれと苦笑を落として、秋蘭は彼の背を追い掛けようとしたが、一度だけ振り返り、空を見上げた。
日輪の光が温かく差し込んでいるというのに、彼の冷たい瞳を思い出してか、薄ら寒く感じた。
そうして、ぽつりと言葉を零す。
「……異質な才と先見を以ってしても、華琳様のように乱世を楽しむ事など出来んのだな、お前は。どうか……人を殺しても歪むなよ」
†
金色に輝く鎧は眩い光を反射し、威風堂々、と言った様子であった。
他の軍からすれば趣味が悪いと言わざるを得ないが、麗羽はこの色を気に入っていた。
人の社会に於いて、金とは最も単純な力である。物が買える、名声も買える、名誉も買える、人脈も買える……そして人の命でさえも買えてしまう。
欲望の化
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