私は何も見ていない
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小さな雲が一つだけ……初日もあんな大きさと形をした雲を見た気がするんだけど。
コールするのを止めてメールで詳細を送ってから譲渡の力で視力を上げる。雲だと思っていたそれは、初日の映像で見た白いスーツにマントを羽織ったゼオンだった。ゼオンも私に気付いたのか手招きをしている。ドライグの補助を受けながら30分程かけてゼオンの元まで飛翔する。
「くくっ、乗ると良い」
私の無様な飛行姿を見てゼオンが笑いを零しながらマントを広げて乗る様に促す。おそるおそる体重をかけると、予想以上に硬い感触で、例えるなら人を駄目にするクッション位の硬さだ。
「良く気付いたな。この距離なら白音の仙術による索敵から逃れられるのだがな」
「初日にも似た様なのが浮かんでたから。もしかしてずっと居たの?」
そうだとしたらお風呂とか覗かれてたのかな?この別荘って露天風呂だから。
「いや、さすがに屋台もあるし夜中は屋敷で寝て、朝一にその日の屋台の材料を仕入れて、仕込みを終えてからだな。この時間位から夕方まで毎日通っている」
「毎日って、大変じゃない?」
「それほどでもないな。オレは心配性でな、無茶をしないかとハラハラする位ならこっそり監視する位負担にも感じないな」
「だけど部長が嫌がるからこっそりと?」
「正解。背伸びがしたい年頃なんだろう。夏休みから本当の意味でのレーティングゲームデビューだからな。現代ではレーティングゲームの戦績がその悪魔の評価に直結していると言っても過言ではないからな。次期グレモリー家当主として力が入り過ぎているんだろう」
「あれ、部長が当主ってことはゼオンが婿入り?」
「そうなる。オレには幼い弟が居るからな。ベル家は弟のガッシュが継ぐ事になるな」
「ふ〜ん。あれ、でもゼオンがベル家を出るのってマイナス要素ばっかりな気がするんだけど」
「そうでもないな。グレモリー家は公爵でベル家は伯爵だからな。長男であるオレが婿入りしても不思議ではない。それに、いや、なんでもない」
何か話したくない事情でもあるのかそこで会話を切られた。まあ、知られたくない事の一つや二つ位あるよね。
「修行の方は順調か?」
「はい。なんとか譲渡の力も使える様になりました」
「ほう、中々の成長速度だな。少し使ってみてもらえるか?出来れば2回分でだ」
ゼオンに言われて譲渡の力でゼオンを全体的に強化する。するとゼオンが顎に手をやって目を瞑り考え事を始める。イケメンはどんな格好をしてもイケメンですね、眼福です。
「ふむ、すまないが今度は普通に自分を強化してもらえるか?」
「あっ、はい」
言われた通りに自分を強化する。その間、ゼオンはじっと瞬きもせずに私の事を見つめてきた。嫌らしい視線は全
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