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異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
異聞 第四次ティアマト会戦(その5)
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イム侯か?」
俺の答えにフレーゲル男爵が笑い出した。
「卿は単純だな」
「……」
喧嘩を売ってるのか、この野郎。睨みつけたがフレーゲルは気にする様子も無かった。忌々しい奴。
単純という言葉を考えるとリッテンハイム侯ではないようだ。他に誰かいるという事か……、それともやはりブラウンシュバイク公? フレーゲルは何らかの考えが有ってそれを邪魔している?
「残念だが伯父上も関係もないぞ。今回私がここに来たのは伯父上の命令によるものだ。不本意だが卿を救えとな」
「……」
“伯父上も”と言った。つまりリッテンハイム侯は無関係という事だ。自分が貴族達に嫌われている事は理解している。しかしブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯以外にもミュッケンベルガーに働きかけて俺を押さえつけようとした人間が居る、一体誰が……。
いやそれ以上に不可解なのはブラウンシュバイク公が俺を救うためにフレーゲルをここへ寄こしたという事だ。一体何故俺を救おうとする? コルプト大尉の一件で俺には不快感を抱いているはずだ。本来なら俺を救おうとするなどあり得ない。そしてフレーゲルもその命令に大人しく従っている……。
一体何が起きているのだ? キルヒアイスを見た、彼も困惑した表情を見せている。俺達の知らないところで何かが動いている……。“卿が知る必要は無い事だ”、あの言葉は貴族達の間で密かに争いが起きているという事か、そしてその争いに何らかの形で俺が絡んでいる……。
考え込んでいるとフレーゲル男爵の声が聞こえた。
「卿はヴァレンシュタイン少佐の事をどの程度知っている?」
「ヴァレンシュタイン少佐? ……少佐は有能な士官だが」
「そうではない、彼女の素性についてだ」
彼女の素性? 妙だな、何を気にしている? その事が今回の件に関わりが有るのか?
「少佐の両親がある貴族に殺されたという事は知っている」
「それだけか?」
探る様な口調と視線だ、不快感よりも困惑した。
「……他に何かあるのか?」
「……」
「彼女は有能な士官だ。それで十分だろう」
フレーゲル男爵が俺をじっと見ている。そして一つ溜息を吐いた。ムカついたがそれ以上に居心地の悪さを感じた。
「ミッターマイヤー少将を救うには彼女の進言が有ったはずだ、違うか?」
「……いや、違わない」
「にも拘らず卿は少佐について何も知らぬ……。暢気な事だ」
「……」
フレーゲル男爵は何時になく生真面目な表情をしている、反論できなかった。せめてこいつが嫌味でも言ってくれれば……。
「有能で役に立つならそれで良いか……。それは人間に対する扱いではないな、道具に対する扱いだ」
「……」
そんなつもりは無い、声に出したかったが出なかった。フレーゲル男爵がキルヒアイスに視線を向けた
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