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異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
異聞 第四次ティアマト会戦(その5)
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な」
そう言うとフレーゲル男爵は笑い声を上げた。奴の目が、俺がそれを出来ないだろうと言っている。いけ好かない奴だ、こいつに頭を下げるなど真っ平御免だ! 全く話にならない。
「……フレーゲル男爵、教えていただきたい」
フレーゲル男爵もキルヒアイスも驚愕している。何で俺は“教えていただきたい”なんて言っているんだ? これで理由が詰まらなかったら手加減無しで殴ってやる! そうだ、そのために俺は頭を下げているのだ。
「……分かった、良いだろう、教えよう。但し、ここでは拙い。私の部屋に来い、こっちだ」
男爵が歩き出す、その後を俺とキルヒアイスが続いた。先を歩くフレーゲル男爵が突然可笑しくて堪らないといったように笑い出す。そっくり反って笑う頭を思いっきり叩いてやりたかった。
フレーゲル男爵の部屋に入ろうとするとキルヒアイスが自分は外で待つと言いだした。男爵は差別意識の塊みたいな男だ、平民であるキルヒアイスが部屋に入るのを嫌がるに違いない、そう思ったのだろう。だが意外な事にフレーゲル男爵がキルヒアイスも部屋に入れと言った。
俺が驚いているとフレーゲル男爵が意地の悪い目で俺とキルヒアイスを見た。
「卿と部屋で二人きりなど御免だな。どんな噂が流れるかと思うとぞっとする。私はいたってノーマルなのだ」
「こっちこそ卿と二人きりなど御免だ!」
よりによって何を言い出すのだ、この馬鹿は。俺とおまえが……だと? 気でも狂ったか!
「なら問題は無い、二人とも入れ」
男爵が部屋に入り俺、キルヒアイスが後に続いた。
部屋には俺達よりも先に人が居た。フレーゲル男爵の付き人らしい。男爵はその男に部屋に出ている様に命じた。
「ミューゼル提督は今度ローエングラム伯爵家を継承される。だが元は賤しい出なのでな、貴族の義務も誇りも知らぬ。よって私が教える事にした。飲み物を用意してくれ、水で良い、それを用意したらお前は外で待っていろ」
殴ってやろうかと思ったが我慢した。男爵の狙いが分からないわけではない。表向きはそういう事にしておこうという事なのだろう。しかし妙に上機嫌なフレーゲル男爵を見ると不愉快だった。そんな俺を見て男爵がニヤニヤ笑っている。こいつ、わざとだな、俺を不愉快にさせて喜んでいる。
ソファーに座って水の用意を待つ。付き人は水の入ったグラスと水差しを用意すると部屋を出て行った。フレーゲル男爵が水を一口飲む。飲み終わるとこちらを試す様な視線を向けてきた。
「今回の一件、誰が絵図を描いたと思う?」
誰が絵図を描いたか……。コルプト大尉の一件が原因とすれば考えられるのはブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯だが……。
「私に遠慮はいらん、伯父上の名を上げても良いぞ」
「そうしたいが、それだと卿の事が説明がつかない。リッテンハ
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