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異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
異聞 第四次ティアマト会戦(その5)
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一つで元帥になり元帥府を開く。だがそれで終わりではない、その先が有る……。

キルヒアイスと伴に私室に戻った。ソファーに並んで座りゆったりと寛ぐ。疲れた体にソファーの柔らかな感触が気持ち良かった。
「勝ったな、キルヒアイス」
「はい、ラインハルト様はお勝ちなされました」
「俺が勝ったんじゃない、俺達だ。そうだろう、キルヒアイス」
「はい」

俺達は勝った。反乱軍にだけじゃない、ミュッケンベルガーの罠からも勝った。そしてその事はこの会戦に参加した者誰もが理解したはずだ。彼らには昨日までの俺と今の俺は違って見えるだろう。誰よりもミュッケンベルガーがその事を理解しているに違いない。俺達は勝った。

「一つ気になる事が有る」
「フレーゲル男爵の事ですね」
「そうだ、一体何を考えているのか……」
お互いに顔を見合わせた。キルヒアイスが躊躇いがちに口を開いた。

「ラインハルト様と関係を改善したいと考えているのでしょうか?」
「さあ、どうだろう」
キルヒアイスの声は半信半疑といった響きを帯びている。それ以上に俺の声も半信半疑の響きが有った。一体フレーゲルは何を考えているのか……。



帝国暦 486年 9月22日   イゼルローン要塞  ラインハルト・フォン・ミューゼル



イゼルローン要塞に着くと改めてミュッケンベルガー元帥に呼ばれて今回の戦いでの働きを褒められた。会戦直後の讃辞に比べれば幾分はましだっただろう。二度も褒めるという事は後ろめたい事が有るからに違いない。俺を罠にはめようとしたことを騒いでほしくないという事か。もしかすると俺の実力を認め、関係を改善したいのかもしれない。だが無駄な事だ、いずれその地位は俺が貰う。

キルヒアイスと伴に自分に用意された部屋に戻ろうとするとフレーゲル男爵に会った。
「上手く切り抜けたようだな」
「卿のお蔭だ、礼を言わせてもらう、感謝している」
俺の言葉にフレーゲル男爵は少しも感銘を受けた様子を見せなかった。詰まらなさそうにしている。

「礼には及ばぬ。……まあ気を付ける事だ、卿は敵が多い。これが最後とは思わぬことだ」
最後は冷笑を浮かべ嫌味っぽい口調だ。どうもおかしい、好意を見せたかと思うと突き放したような態度を取る。何故だ?

「何故だ? フレーゲル男爵。何故私に好意を示す?」
「卿が知る必要は無い事だ」
「……」
会戦前にも同じ会話をした。“卿が知る必要は無い”、つまり理由は有るのだ、気まぐれではない。そしてあの時も、今も同じように無表情になっている……。

当たり前の事だが俺が納得していないと思ったのだろう。フレーゲル男爵は微かに笑みを浮かべた、冷笑だ。
「納得は出来んか……、まあそうであろうな。……教えても良いぞ、教えて下さいと頼むなら
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