Episode32:アイス・ピラーズ・ブレイク
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ようとした刹那、
「なっ!?」
まるでその瞬間を狙っていたかのように隼人の『ファランクス』が発動し、前列四つの氷柱全てを押し潰した。
攻めに転じ過ぎており、自陣の守りが疎かになっていた。その油断こそが隼人の狙いだ。最初に自分から仕掛けなかったのも、相手を攻撃一辺倒にするためである。
その事に気付き、急いで防御用の魔法式を展開しようとするが、もう遅かった。
マルチキャストで用意していた『熱乱流』が発動し、敵陣に残る氷柱を呑み込む。
「終わりだよ」
どうにか熱乱流を氷柱残り二本で耐え切った七高選手だが、恐らくは勝利をもう諦めていたのだろう。せめて完封負けだけは避けようと意識全てを敵陣へと向けて、しかしその魔法が発動するより早く、自陣の生き残った氷柱全てが砕け散った。
「そ、そんな…」
結局彼は、隼人に対しなにもできずに終わった。圧倒的な実力差に、思わず膝をつく。
そんな彼に隼人は一礼して、湧く歓声を背に櫓を降りて行った。
まるで自分など眼中にないとでも言うように。
☆★☆★
新人戦男子アイス・ピラーズ・ブレイク予選最終戦。再び大トリを務める隼人は、開戦同時に『ファランクス』を発動し敵陣前列の氷柱を全て潰した。
相手も一回戦の隼人の試合を見て対策していたのだろう、氷柱に情報強化を施していたようだが、隼人の干渉力の前ではそれは意味をなさない。
しかし、彼は五高の一年のエースの看板を背負っている。そしてそれに見合う矜持も実力も持っている。
負ける訳にはいかないと、彼は奥の手である『氷炎地獄』を発動した。
自陣と敵陣の中央を境界と設定し、自エリアの物質の振動と運動エネルギーを減速させ、その分のエネルギーを敵エリアへ移動させ加熱するAランク相当の高等魔法。
零度の空気が自陣の氷柱を強固なものにし、灼熱の炎が敵陣へと襲いかかる。
深雪以来の大魔法に観客が湧く中、隼人は冷静に魔法式の展開を終えていた。
隼人から発せられた絶対零度の波動が、襲い来る熱波を全て凍らせた。
振動減速系広域魔法『ニブルヘイム』。威力を上げれば人間を細胞ごと凍結できるその魔法は、例え灼熱の炎であろうとその全てを凍らせてみせた。
「さて」
氷炎地獄よりも更に強力な熱波が、五高選手の自陣をのみ込んだ。
気体分子をプラズマに分解することによって高エネルギーの磁場を作り出して灼熱地獄とする広域魔法、『ムスペルスヘイム』。
放出された雷炎は瞬く間に敵陣の残る全ての氷柱を蒸発させた。
「終わりだね」
深く一礼。五高のエースである彼ですら、隼人の氷柱に傷一つつけることはできなかった。
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