第四章
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「それは頼むぜ」
「わかってるさ、俺も言わないからな」
「そういうことでな」
「とにかく、遂になんだな」
「夢みたいだったぜ」
その時はというのだ。
「石鹸のお店はな」
「高かっただろ」
「相当な、けれどすっきりしたぜ」
「長年の夢が適ったからな」
「それだけにな」
喜びもひとしおというのだ、その考えが顔にも出ている。
「最高だったぜ」
「そうか」
「ああ、じゃああの娘とも付き合って」
「受験の方も頑張れよ」
「わかってるさ、大学でも一緒になろうぜ」
聡は小学校の頃からの親友に笑顔で言った。
「そうなろうな」
「だからこそな」
「受験もな」
「お互いに頑張ろうな」
こう話してだ、そしてだった。
二人は受験も頑張り同じ大学の学部に合格した。御門が経験をしたのは大学に入ってすぐであったが。
二人はそれぞれ就職し結婚し家庭も持った、だがそれでも付き合いは続いていた。そして不惑に近付いたある日のこと。
二人は居酒屋で飲んでいた、そしてだった。
聡は焼酎を焼き鳥で楽しみながらだ、店のカウンターで自分と同じものを口にしている御門に対してやれやれといった顔でぼやいた。
「最近な」
「かみさんと上手くいってないのかよ」
「朝や昼はいいんだよ」
そうした時間はというのだ。
「休日だってな」
「そうか、それでもなんだな」
「夜の方はな」
「さっぱりか」
「全然駄目だよ」
そのやれやれといった顔での言葉だ。
「起きないんだよ」
「そうか、もうか」
「二週間に一回か」
「おいおい、それはまた随分弱くなったな」
「その一回もな、三回までだな」
「それが限界になったんだな」
「すっかりな」
二人共髪の毛はあるがやや肉がついてきていてしかも顔には皺が出てきている、その風貌で飲みながら話すのだった。
「弱くなったぜ」
「中学の時は違ったのにな」
「あの時なんてな」
「一日に何度もだったな、御前」
「六回でも七回でもいけたぜ」
あの時はというのだ。
「それこそな」
「抜くだけだったにしてもな」
「あの時は本当に疲れ知らずですぐに回復したのにな」
「今じゃ、か」
「その二週間に一回の後でな」
妻との夜のその後、三回が限度なまでに衰えたその後はというと。
「朝しんどいんだよ」
「腰がか」
「身体全体がかよ」
「運動不足じゃないのか?」
「いや、運動不足っていうかな」
そう言うよりはというのだ。
「何か本当に最近な」
「そっちがさっぱりになったんだな」
「衰えを感じるぜ」
「プロ野球選手みたいな言葉だな」
「実際俺達の歳になったら引退だろ」
プロ野球選手はというのだ。
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