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ラオコーン
第三章
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「ですが今は」
「私の予言を」
「信じられます」
 そうなったというのだ。
「危機を感じているが故に」
「有り難うございます」
「それではです」
 ここでまた言うラオコーンだった。
「何としても皆にこのことを知らせ」
「トロイアを救わなければ」
 二人で話しトロイアの者達に今こそ最大の危機であり警戒すべきだと説いて回った、だがカサンドラの呪いのこととそれ以上に戦いに終わりに浮かれているトロイアの者達の耳に彼等の言葉は届くものではなかった。
 それで誰も信じなかった、そうしてだった。
 トロイアの者達はだ、かえってだった。
 ラオコーン達を疎んでだ、こう言う始末だった。
「何故そんなことを言うのだ」
「もうすぐ戦いが終わるというのに」
「気が触れたのか」
「戦いが続いて欲しいのか」
 こう言うのだった、そしてだった。
 誰もラオコーン達の言葉に耳を貸さないままだ、ギリシア側の申し出を受けてそうしてであった。そのうえで。
 彼等はギリシア側からの贈りものを受けた、それは。
 巨大な木馬の象だった、城壁の中に入れられたそれを見てだった。
 ラオコーンはさらに恐れの顔を見せてだ、カサンドラと子供達に言った。
「あの木馬だ」
「あの木馬ですか」
「あの木馬こそがですか」
「敵の罠だ」
 ギリシア側のそれだというのだ。
「間違いない」
「ではあの木馬は」
「何としても」
「燃やすかだ」
 それか、というのだ。
「中を確かめるのだ」
「そうしなければ」
 カサンドラも不吉なものを感じつつ木馬を見てラオコーンに言った。
「トロイアは」
「はい、滅びます」
 そうなるというのだ。
「今が最も危険ですから」
「勝ったと思っているからこそ」
「何度も言いますがオデュッセウスがいるのです」
 ギリシア側にはだ、敵である彼等の方に。
「彼の智略であれば」
「あの木馬に仕込むこともですね」
「充分に考えられますから」
「では父上」
「すぐにです」
 息子達もラオコーンに言う。
「ですからここは」
「あの木馬の中身を確かめましょう」
「そうすべきだな」
 ラオコーンは息子達のその言葉に頷いた、そして実際に。
 木馬の方に行き中身を確かめようとした、だが。
 それはだ、他ならぬトロイアの同胞達が彼を止めて言うのだった。
「今度は何だ」
「何がしたいのだ」
「贈りものに何をするのだ」
「流石に贈りものに何かをするのはよくない」
「例え神官殿であってもだ」
「その贈りものの中を確かめたいのだ」 
 ラオコーンは険しい顔で自分の前に立ち阻む彼等に言うのだった。
「兵士でもいたらどうするのだ」
「ギリシアのか」
「そう言うのか」
「そうだ、その兵達が中から出てだ」
 
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