第三章
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初
のか」
「そうです」
少しふらふらとしているようだったがそれでも言うのだった。
「それを作ったんですよ」
「ではそこもまた」
「その通りです。壁にも天井にもフランチェスカ様がおられます」
つまり絵画にしたのである。
「そして彫刻も置いています」
「ロレンツォ様は君に自らが休まれる場所を任せたのだな」
ダ=ビンチはそれを聞いて述べた。
「そういうことか」
「はい、とても有り難いことに」
ラファエロはその赤くなってしまっている顔で答えた。
「それで私の全てを込めて作りました」
「そうか。それはいいことだな」
偏屈だと評判のミケランジェロもこの時ばかりは素直な言葉を出した。
「ロレンツォ様も喜ばれる」
「はい、そう思います」
「あの方はあの館で一生を過ごされる」
ダ=ビンチは述べた。
「そう、これからな」
「そうだな。フランチェスカ様と共にな」
ミケランジェロは館の門の入り口の左右に置かれているフランチェスカの像を見た。それはそれぞれギリシアのアテナの鎧兜を身に着けていた。
この二つの彫像もまた彼が作ったものである。館の中にあるものだけではなかったのだ。k彼が作ったものは。
「おられるのだな」
「人は多くの罪も犯す」
ダ=ビンチはまた言った。
「しかしだ。時としてこうしたこともする。その想い故にな」
そうしてまたその館を見るのだった。館の中では今ロレンツォが満ち足りた顔で中を見回していた。彼は一人恍惚として呟いていた。
「フランチェスカ」
妻の名であった。
「これで私達は。何時までも一緒だよ」
その恍惚とした顔で館の中を歩き回りながら至る場所にある彫刻や絵画を見て回るのだった。それはどれもフランチェスカの姿であった。
この館は現在も残っている。ロレンツォはこの館で生涯を過ごし亡くなったのは自身の寝室であった。ラファエロが絵画と彫刻を残したその部屋もまた今もある。
全てがフランチェスカで彩られたこの館からはロレンツォの想いが感じられる。これを狂気と呼ぶか純愛と呼ぶかは人によってそれぞれであろうか。
しかしこれだけは言える。ロレンツォは生涯フランチェスカだけを愛していた。そうしてその愛がこの館を作らせたのである。今二人は並んでこの館の端に眠っている。二人はその眠る場所も同じであるのだ。少なくとも二人は幸せであると言ってもいいであろう。
離れられない愛 完
2009・6・23
[8]前話 [9]前 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ