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愛撫
第二章
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「これからね」
「頑張ってね、それじゃあ」
「ええ」
 私は彼女とは笑顔で別れた、そうして。
 家に帰った、そのうえでシャワーを浴びて寝ようと思った。夕食は外で簡単に済ませていた。だがここでだった。
 家のチャイムが鳴った、それで。
 まさかと思ってだった、扉の向こうを覗き穴から見ると。
 彼がいた、私はまさかと思った予想が当たって驚きながらだった。
 扉を開けてだ、彼に尋ねた。
「どうしたの?」
「来て悪いのか」
「ずっと来なかったのに」
「気が向いた」
 これが彼の返事だった。返事をしながら私に聞かずに家の中に入ってきた。まるで自分の家の中に入るかの様に。
「だからな」
「来たっていうの」
「ああ」
 玄関で靴を脱ぎながら私に応えてくる。
「そうだ」
「勝手ね」
「そうだろうな」
 素っ気なく私に答えた。
「俺はそんな奴だ」
「どうして来なかったの?」
「気が向かなかった」
 だから来なかったというのだ。
「だからな」
「それが理由なの」
「そうだ」
 こう答えた彼だった。
「邪魔か」
「邪魔とか言わないけれど」
「ならいいな。今日はここに泊めてくれ」
「何も用意してないわよ」
 もう二度と来るとは思っていなかった、それでだった。
 彼が来る用意はしていなかった、もっともこのことはいつもだったけれど。
「それでもいいの」
「食べるものは食べた」
 やはり素っ気無く答えてくる、私の部屋の中に当然の様に入りながら。
「そのことは気にするな」
「そう言うのね」
「シャワーだけ浴びる」 
「使っていいとは言ってないわよ」
「なら駄目か」
「駄目じゃないけれど」
「ならいいな、使わせてくれ」
 本当に勝手にだった、私の家の中に何でもないかの様に入って来たかと思うとだった。シャワーを浴びて外から置いていた彼のガウンを来て出てきて。
 リビングでワインを飲んでいた私のところに来て今度はこう言ってきた。
「飲むか」
「相変わらずね、そうしたところは」
「勝手だって言うんだな」
「そうよ、自分勝手で無愛想で」
「しかも浮気性か」
「またどうせ他の女の人のところに行っていたのでしょ」
「だったらどうだ」
 開き直りではなかった、当然のこととして私に言ってくる。何時の間にかグラスを出してきてそのうえでだった。 
 自分でワインをそのグラスに注ぎ込んで飲みはじめる、そしてだった。
 ワインを飲みながらだ、私に言ってきた。
「嫌いか」
「嫌うならそれまでよね」
「俺は自分を嫌いな相手とは付き合わない」
 このことはいつも言っている、彼は。
「ならいい」
「嫌いって言った覚えはないわよ」
 私は飲みながらにこりともせず返した。
「別にね」
「そうか」

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