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バージンロード
第一章
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「このヴェールのね。裾を持って一緒に来て欲しいの」
「ヴェールの裾を?」
「そうよ。紫ちゃんが持って」
 静かな笑みと共にこのことを頼む。
「そしてね」
「そして?」
「紫ちゃんが結婚する時にね」
「私が結婚する時に?」
「私に持たせて」
 こう頼むのだった。
「私に。いいかしら」
「お姉ちゃんが持つの」
「私の裾を持ってくれるじゃない」
 またこのことを紫に話す。
「だから。紫ちゃんが結婚する時にはね」
「お姉ちゃんが持ってくれるのね」
「駄目かしら。私妹はいないけれど」
 三人姉妹の末っ子である。だから彼女は妹とという存在を知らなかったのだ。
「紫ちゃんは私をお姉ちゃんって呼んでくれるから」
「お姉ちゃんはお姉ちゃんだよ」
 翠の目をじっと見上げての言葉だった。
「私のお姉ちゃんだよ。ずっとね」
「そう言ってくれるのね」
「うんっ」
 また笑顔で頷く紫だった。
「そうだよ。ずっとね」
「だから。御願いしたいの」
 翠もまた紫の目をじっと見詰めていた。二人の心はそれぞれの目を通して通じていた。
「その時に。いいかしら」
「うん、いいよ」
 ここでも純粋に答える紫だった。
「私も。お姉ちゃんいないから」
「そうだったわね」 
 紫も紫で姉を知らないのだった。兄が二人いる。こうしたことでも紫と翠は似ていた。
「私達。本当に似てるわね」
「そうよね。だから私お姉ちゃんがいてくれて嬉しいの」
 彼女を姉として見ている言葉だった。
「お姉ちゃんがいるから」
「私もよ。紫ちゃんがいるから」
 やはり二人の心は同じだった。
「嬉しいのよ」
「一緒なのね」
「そう、一緒よ」
 また紫に対して微笑んでみせた。
「私達はね」
「そうなの」
「だからね。約束よ」
 また紫に対して話す。

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