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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百六十五話  戦争への道 
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する動きを見せた事に対する罰だと言われているが元々内務省が持つ大きすぎる権限に反発する声、弊害を指摘する声は有ったのだ。俺には政府が報復というよりもそれらの声に配慮したのではないかと思える。今内務省に残るのは各行政機関の機構・定員・運営や各行政機関に対する監察、恩給、国勢調査だけだ。内乱により内務省はその権力を失った。

「今忙しいと仰られるのは?」
「国勢調査だよ」
「国勢調査? そういえば私の所にも国勢調査の資料が来ていました。……妙だな、あれは十年毎、下一桁が五の年に行われると思っていましたが……」
俺が疑問を口にすると伯が“その通り”と言って頷いた。

「内乱で随分と人が死んだからね。貴族に与していて没落した人間もいる。今までの国勢資料は当てにならないだろうと政府は考えている」
「なるほど」
国内は劇的に変わった。確かに過去の資料は当てにならない。

「それにもう一つ問題が有った」
「もう一つ?」
問い返すと伯が頷いた。
「没落した貴族達だがまともな国勢資料を作っていなかったようだ。連中から政府に提出された資料は全く役に立たない」
「それは……」
やれやれだ、呆れもしたが貴族達が遣りそうな事だとも思った。俺が苦笑するとマリーンドルフ伯は声を上げて笑った。ヒルダが“お父様”と伯をまた窘めた。

「失礼、そんなわけでね、二重の意味で過去の資料は役に立たないという事だ。それで急遽国勢調査をという事になった」
「なんと言うか、まあ言葉が見つかりません」
伯がまた笑った。今度はヒルダも咎めなかった。彼女も苦笑している。

「今回の国勢調査で内乱終結後の帝国の人口、世帯の実状がはっきりする。次は五年後に行うが改革によって帝国がどう変わったか、はっきり見えてくるはずだ」
「五年後? 十年後ではないのですか?」
俺が問い掛けると伯が頷いた。
「今後は五年毎に国勢調査を行う。改革には常に正しい情報が必要だからね。十年毎ではいささか間が開き過ぎる、不備が有っても気付くのが遅くては損失が大きくなりかねない」
「……」

なるほど、確かに十年毎ではいささか間が開き過ぎるな。改革によって帝国は急激に変化している、五年毎の国勢調査は妥当だろう。そして政府はこれからも本気で改革を進めようとしている証拠でもある。喜ばしい事だ、俺だけじゃない、多くの平民達が喜ぶだろう。

「ところで軍の方はどうなのかな。最近フェザーンが騒がしいが」
「密かにですが戦争の準備は始まっています」
俺が答えると伯はウンウンと頷いた。
「おそらくフェザーン、イゼルローン両回廊へ帝国軍全軍を挙げての大規模出兵になる筈です」
伯が大きく頷いた。

「最後の戦いか。いよいよだな、政府でも戦争が間近だろうと話が出るよ」
「……」
「帝国軍が
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