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一人より二人
第三章
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第三章

 しかし。医師の沈痛な顔を見て楽観はできなかった。不安を拭い去ることができずまた彼に対して問うのであった。今にも壊れてしまいそうな顔で。
「ですが」
「ですが!?」
「出血があまりにも多く」
「出血がですか」
「そうです。とりあえず輸血はしましたが」
 それもまた華を安心させた。しかし医師の沈痛な顔は終わらない。彼はさらに言葉を続けてきたのだった。蒼白になっている華に対して。
「右手を失い」
「右手を」
 翔太の利き腕をだ。彼はそれをなくしてしまtったのだ。
「その他の怪我も酷くおまけに跳ね飛ばされた際に木に当たりそこから破傷風菌が入ってしまったようなのです。血清は打ちましたが」
「破傷風・・・・・・」
 その恐ろしさは華も知っていた。傷口から破傷風菌が入ってなりそれにより死に至る病だ。手遅れになった際はあまりにも悲惨で苦しみ抜いて死ぬのである。恐ろしい病気だ。
「この三日が山場です」
「三日、ですか」
「破傷風は。あまりにも強いので」
 医師は語る。その菌の恐ろしさを。
「血清が利けばそれで助かりますがそうでなければ」
「・・・・・・そうですか」
「全力は尽くします」
 それは保障するのだった。医師として。
「しかし。最悪の事態は覚悟しておいて下さい」
「・・・・・・わかりました」
 聞きたくはない言葉を告げられた。しかしであった。面会謝絶といった状況が何よりも雄弁にそのことを彼女に教えていた。それを聞いて絶望に囚われる。崩れ落ちはしなかったがそれでも。絶望に陥り病院の中の椅子の一つに座り込んで身動きできなくなった。もう何も考えられなかった。
 これまでのことが脳裏に思い浮かんでいく。まさしく走馬灯の様に。楽しかったことも悲しかったことも両親が死んだあのお通夜の時も。全て翔太の思い出だ。だがそれもすぐに消えていく。消えて後に出て来るのは。絶望だけだった。何もかもが終わってしまった、そうしか考えられなくなった。
 その日はそのまま病院で一日を過ごした。気付いた時には椅子に座り込んだまま眠っていて起きると肩から毛布がかけられていた。病院の人の誰かがかけてくれたらしい。そのことにまずは感謝したがそれでも絶望は消えはしなかった。その絶望の中で思い続けるのは翔太のことばかり。必死に祈りだした。
 そのままその日の午前中が終わった。何も食べられなかった。食欲もない。しかしであった。その彼女に前から声をかけてくる者がいた。
「華ちゃん」
「華・・・・・・ちゃん」
「そうだよ、華ちゃん」 
 明るい声だった。それをかけてきたのだった。彼女に。
「大丈夫かな。ちょっと寄ってみたんだけれど」
「その声は」
 聞き覚えのある声だった。その声を聞いて顔をあげると。そこには彼がいた。
「光平さん。ど
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