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その魂に祝福を
魔石の時代
第五章
そして、いくつかの世界の終わり1
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が、それでも僅かに頷いたように見えた。
『おっと、珍しく仕事が早いじゃねえか』
 そんなやり取りは無視して、リブロムが笑った。
 モニターには武装局員に包囲されているプレシア・テスタロッサの姿が映し出されていた。ただし、プレシア本人は余裕の表情で椅子に座ったまま、それを眺めている。
『妙だな……。随分と余裕たっぷりじゃねえか。いくらあの石っころを持ってるからって全く消耗してねえ訳がねえ。一体どんな切り札を隠して――いや、待てよ。そうか!』
 リブロムが言いかけた時、プレシア・テスタロッサを包囲していた武装局員の一部が、彼女の背後にある部屋へと踏み入ろうとする。
『やめろ! その部屋に入るんじゃねえ!』
 その動きを見咎めたリブロムが叫んだ。だが、彼が叫ぶより僅かに早く、モニターにその部屋にあったものが映し出された。
 そこに鎮座していたのは、巨大な筒状の容器だった。何かしらの液体で満たされ、幽かに輝くその中には、一人の少女が静かに眠っていた。
「防いで!!」
 慌てて他の武装局員達がデバイスを構えるが――それより早く、艦長が叫んでいた。その指示は的確だった。
『私のアリシアに近寄らないで!』
 そうでなければ、一人二人の死人では済まなかったはずだ。
 艦長が叫んだ次の瞬間、突如として豹変し――余裕の表情を投げ打ったプレシア・テスタロッサはたった一撃で全ての武装局員を沈黙させていた。
「部隊の収容急いで!」
 全滅ではないが――他の区画の制圧に向かった局員は多くない。彼らが向かったところで勝ち目などないのは明白だった。
『そうか。やはりそれが望みか……』
 モニターを睨みつけたまま、リブロムが呻く。
 彼が見ているのは、方々に倒れる武装局員ではない。容器の中で、長く美しい金の髪を漂わせて眠るその少女だった。
 その少女は――彼女のその姿は、フェイト・テスタロッサにとてもよく似ていた。
『どうやらしくじったようね。まったく、最後まで役に立たないわ』
 こちらを見ながら、プレシア・テスタロッサは言った。
『でも、もういいわ。もう終わりにする。この子を亡くしてから続くこの暗鬱な時間を』
 破滅的な気だるさを漂わせたまま、彼女は続ける。
『たった八つのロストロギアで、アルハザードに辿りつけるか分からないけど……この子の身代りの人形を娘扱いするのも、もううんざりよ』
 人形。彼女がそう言った相手が誰なのか。嫌でもそれを理解してしまう。
『フェイト、聞いていて? あなたの事よ。アリシアの記憶をあげたのに、そっくりなのは見た目だけの役立たずなお人形。プロジェクトFATEの失敗作。名前も無いガラクタさん』
 アルフの背中から、フェイトが滑り落ちた。できる事なら、自分自身を思い切り殴り飛ばしてやりたい。そんな事は考えていなか
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