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その魂に祝福を
魔石の時代
第五章
そして、いくつかの世界の終わり1
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勇気が出る、そんな言葉を。
≪ここから先はオマエ達の物語だ≫
「最初で最後の本気の勝負!」
 その言葉に頷くようにして、私はその子に告げた。




『さてさて。どうなるかな?』
 呟いたリブロムの声は、いつも同じだった。つまり、皮肉げで楽しげだ。この本に悪意がない事はいい加減分かっているが、この状況では落ち着かない。
「どうって……。リブロムさんはなのはが心配じゃないんですか?」
 黒衣の魔導師――フェイトという名前らしい――と一騎打ちを始めたなのはの姿を見ながら、僕は思わず食ってかかった。
『あのチビが自分で言い出した事だしな。好きにやらせときゃいいんだよ。負けたからって命を取られる訳でもねえしな。非殺設定とか言ったか? あの嬢ちゃんは律儀にそれを使ってくれてるらしいからな』
「それは、そうですけど……」
『それに、相棒の読みは概ね当たりだ。いい感じに疲労してるし――思った以上に、精神的にも揺らいでやがる。それに、あのチビもどうやらあんなナリでもあのチャンバラ馬鹿どもと同じ血が流れてるらしいな。なかなかいい勝負してんじゃねえか』
 確かに。温泉郷での一方的な敗北が嘘のように、なのはは善戦していた。フェイトの消耗具合を差し引いたとしても、彼女の成長は著しい。僕にしてもリブロムにしても、ほんの少ししか手ほどきをしていないのに。才能の怪物というのはリブロムの言だが……なるほど、確かによく言ったものだ。
 もっとも。光は――いや、おそらくは彼女に関係する誰もが、その才能の開花など望んでいないのかも知れないが。
(これが、僕が生み出した結果)
 だからと言って今さら巻き戻す事などできない。それを認め、痛みと共に呻いた。
「けど、フェイトは本気だよ。そりゃ、本調子じゃないし……何か、いつもと戦い方が違うけど、勝つ事だけは諦めてない」
 アルフの言葉に頷く。今の彼女の動きは、温泉郷で見た洗練された動きからは程遠い。むしろ、自分を削り落とすかのような危うさがある。そして、その危うさこそが、彼女が勝利を望む執念の表れだと言えた。
『……別にどっちが勝とうが関係ねえさ。元々勝敗は決まってんだ』
 さすがにリブロムも躊躇ったらしく、僅かに言い淀んだ。だけど、それは事実だった。残酷なくらいにその通りだった。この戦いに意味なんてない。リブロムの言う通り、もうとっくに勝敗は決まっていた。
 あの子の負けは、この場に出てきた時点で決っているのだから。
 なのはが勝とうが、あの子が勝とうが、管理局はプレシア・テスタロッサの拠点を見つけ出す。それで、もう終わりだ。あとは、光やクロノ達が決着をつけるだろう。
『相棒をあの魔女の棲家に送り込めればそれでいい。そのチャンスを見つけ出すのが、この戦いが持つたった一つの目的だ。だがまぁ……』
 
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