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その魂に祝福を
魔石の時代
第五章
そして、いくつかの世界の終わり1
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 あの子の呼び声に応じる。……あの娘の呼び掛けに応じたのは、初めてかもしれない。
 今さらになって、そんな事を思う。
「フェイト、もうやめよう」
 呼びかけてきたのは、アルフだった。深い傷を負ったのは間違いないらしく、まだ少し消耗しているようだった。けれど、傷自体はもう誰かが癒してくれたらしい。
(良かった。生きてたんだね……)
 また一つ、嘘が綻びた。分かっていた事だ。あの時、管理局の追手は光によって動きを止められていた。そうでなくても、時の庭園まで追って来れたはずがない。
 それなら、あの後アルフに傷を負わせられたのは一人しかいない。そんな事は――それくらいの事は、もう分かっていた。
≪そうよ。彼女の言う通り、もうやめましょう≫
 アルフの他にも、誰かが言った気がした。あの人――ニミュエだろうか。良く分からない。もう、どうでもいい。
「それでも。私は母さんの娘だから」
 私は私が生まれた理由をやり遂げる。ただ、それだけだ。




 珍しく朝早くに目が覚めた。窓がある訳ではないから、朝日が差し込んだ訳ではない。けれど、分かった。夜が明けたのだと。人工的に調整された空気を吸い、吐き出す。朝露の匂いがした訳ではないけれど、その気配だけは身体に染みわたっていくように思えた。
 きっちりと身支度を済ませ、朝ごはんを食べてから、私はリンディに無理を言ってアースラの外へ――私が生まれ育った世界に戻してもらった。
 朝日を浴び、凛とした海風が頬を撫でていく。予定よりはまだだいぶ早いけれど。
 戻ってきて良かった。そう思う。
『珍しいじゃねえか。オマエが自分でこんな時間に起きるなんて』
 クククッ、と腕の中のリブロムが笑った。
「確かにそうかもね」
 くすりと、リブロムに笑いかえす。別に確信があった訳ではないけれど。何か根拠があった訳ではないけれど。それでも思う。
 多分、私は呼ばれたのだと。今はそう信じられた。
「ここならいいよね。出てきて」
  大きく息を吸って、言葉とともに吐き出す。あの子の名前を呼ぶ事も出来た。光が何度か口にしていたから。けれど、まだ直接は聞いていない。だから、呼ばなかった。
 この戦いが終ってから、きっと自分の言葉でその名前を聞こう。そう思う。
『Scythe form』
 返事が返ってきた。振り返ると、近くの街灯の上に彼女はいた。すでにデバイスを構え、私を見つめている。そのまましばらく見つめ合う。
「フェイト、もうやめよう」
 沈黙を破ったのはアルフだった。
「あんな女の言う事を聞いていても、不幸になるばっかりじゃないか。だからフェイト、もうやめよう」
 懇願するようなアルフの言葉に、それでも彼女は首を横に振った。
「それでも。私は母さんの娘だから」
 明確な否定。強い
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