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その魂に祝福を
魔石の時代
第五章
そして、いくつかの世界の終わり1
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ところまでオレを連れていけ。もうじき相棒も正気に戻る』
 口ではそう言いながら、リブロムはフェイト・テスタロッサの元へ頁を羽ばたかせた。彼女の前に舞い降りてから、告げる。
『これから決着をつけてくる』
 その言葉に、フェイト・テスタロッサはゆっくりと視線を動かした。
 先ほど、捨てられた人形のようだと思ったが――実際にこんな表情をした人形を作る人形師がいたとしたらそいつは相当な狂人だろう。人間はこんなにも感情が欠落した表情ができるのか。驚きを通り越し、哀しさを――恐怖さえも覚えた。
『一緒に来るか?』
 その言葉を前に、空虚に見詰めたままフェイト・テスタロッサは言った。
「母さんは……私の事を人形だって。……名前も無いガラクタだって。もう、うんざりだって……」
 それが泣き声だったなら、まだどこかに救いがあった。泣く事も笑う事も、全ては心という原動力がいる。それが完全に失われしまえば、涙すら出ない。
「私は人形なの?」
 その問いかけに、リブロムは呆れたように笑って見せた。
『オマエが何者かだって? そんな事は決ってるだろう。なぁ?』
 リブロムが視線を向けると彼女は――高町なのはは何の躊躇いもなく告げた。
「そんなの決ってるの! 大切な友達だよ!」
『だとさ』
 フェイト・テスタロッサの表情が、ゆっくりと驚きを宿していく。
 困ったように、途方に暮れたように――そして何よりも躊躇うように、フェイト・テスタロッサはしばらくの間、リブロムとなのはを見つめていた。
『人形だろうが名前がなかろうが生まれがどうだろうが、オマエの何が変わる訳じゃねええ。どうせ相棒は気にしねえだろうし……どうやらそのチビも変わらねえようだ』
 フェイト・テスタロッサの髪が僅かに揺れた。彼女が首を縦に振ろうとしたのか横に振ろうとしたのか、それは分からなかったが。
 いずれにせよ、彼女が立ち上がるにはまだ時間が必要だった。だが、
「緊急事態発生! 次元震です! 中規模――いえ、規模はさらに増大中! このままでは、次元断層が発生します!」
「時間は!?」
「この早さで増大すれば、おそらく三〇分足らずです!」
 どうやら時間がないらしい。舌打ちをして、リブロムが言った。
『おいチビ、ここは任せたぞ。オレ達は決着をつけてくる。狼の姉ちゃんは悪いがオレをあの魔女のところまで運んでくれ。この嬢ちゃんの事が気になるだろうが……時間がねえ。なぁに、心配はいらねえ。運んでくれれば後始末は相棒がする』
 時間がないというのは、二つの意味がある。一つは次元断層。もう一つは御神光を蝕む『魔物』の存在だ。もう少しで正気に戻るとリブロムは言っているが、それはあくまで一時的なものなのだろう。この本の言葉を信じるなら、今日が期限なのだから。
「……分かった。ごめん、フ
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