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その魂に祝福を
魔石の時代
第五章
そして、いくつかの世界の終わり1
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ったのに――床に崩れ落ちたその少女の姿を見て、思ってしまった。
 まるで、捨てられた人形のようだと。
『哀れだな』
 言ったのは、リブロムだった。その異形の瞳がプレシア・テスタロッサを見据える。
『一応断っておくが、オレはオマエに言ったんだぜ?』
 奇妙なくらいに静かな声だった。
『記憶を受け継がせたくらいで死人は蘇らねえ。他人の日記を読んだくらいでその本人になっちまうような奴はいねえ。当然だろう?』
 淡々と語られる言葉。それはむしろ嘆きのようにも聞こえた。
『どれほど精巧に過去を追体験したとしても、その本人になる事なんてできない。完全に過去を取り戻したとしても、それは同じだ。今さら死人を呼び起こす事なんてできない』
 それは断言だった。それも一般論としての断言ではない。何故そんな事を思ったのか、自分でもよく分からないが……そう、それには『所詮は一般論に過ぎない』というある種の空虚さがなかった。まるでそんな事はとうに経験したと言わんばかりに。
『その嬢ちゃんを蘇らせる――失われた世界を取り戻す事が望みか?』
『ええ、そうよ。失われたあらゆる秘術の眠る地アルハザード。その地に眠る秘術を使って私は取り戻すの。アリシアを! 過去も未来も! 失われた世界の全てを!』
 リブロムの問いかけに、プレシア・テスタロッサは告げた。対して、リブロムはプレシア・テスタロッサの答えに乾いた笑いを返す。
『その代償に、オマエは一体何を捧げる気だ?』
 世界を取り戻すための代償。仮にそんなものがあるとして――それがどれほどのものなのか、正直僕には見当もつかない。プレシア・テスタロッサとてそれは同じだっただろう。返答が返ってくるまで、一瞬以上の間があった。
『……何でも。何でも捧げるわ! この子を取り戻せるなら、何を捧げても構わない!』
 それは明確な答えではなく、自棄になった叫びのようにも聞こえた。実際にそうだったのだろう。それを最後にサーチャーが破壊され、通信が途絶えた。ただし、
『やれやれ……。相変わらずロクでもねえ予想ばっかよく当たるよなぁ』
 あの瞬間、プレシア・テスタロッサが放った魔力。あの魔力は何かが奇妙だった。所詮は映像越しであり、大した根拠がある訳でもない。だが、何かがおかしかった。
『たまには宝くじでも買ってみるか。この精度であたりゃ大金持ちは間違いねえんだしよ。ヒャハハハハッ!』
 ロクでもない予想とは、おそらくはその原因だろう。僕らが思っている以上に危険な状況が進行していると考えた方がよさそうだった。
『それで、どうやったらあの魔女の根城に行けるんだ? まさか完全に追い出されたわけじゃねえだろ?』
「あ、ああ……。もちろんだ。空間座標は捕えている。転送ポートを使えば、いつでも送り込める」
『そうか。なら、あの魔女の
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