第7話 壊レタル愛ノ夢(前編)
[10/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
密告されて逮捕される危険があるのに、あそこで何をしていたんですか?」
「捕まった人たちは、まぁもう釈放されたみたいだがね、何のことはない普通の人たちだよ。ただちょっと、守護天使や幸福指数に支配された居住区の社会制度に反感を持っていただけのね」
「彼らはあそこで何を?」
「さあ、それは知らないし、実をいうと関係のない話なんだよ。要するに、桑島君はあの廃ビルが気に入ってた。南紀で君に会ってから、彼女はあまり僕のそばにも寄りつかなくなったし、向坂君とも口を利かなくなった。一人で……人気のないところで過ごすことを好むようになった。向坂君が最低限の身の回りの世話をしていたけど、そこに、あの人たちが隠れ家として出入りするようになった」
「邪魔だった、ということですね」
「そう。匿名で密告したのは向坂君だ」
「僕はそこでハツセリと再会しました」
そして、別れた。
「君と再会していることを最初、桑島君は向坂君に打ち明けなかった。むしろ向坂君はね、ACJの特殊警備員が来て危険だから、退避するよう彼女に言っていたくらいなんだ。向坂君は、もし誰にも見られずに君と二人きりで接触する機会があったら、自分のタイミングで君と桑島君を引き合わせるつもりだったみたいだけど」
「向坂さんは一度、ハツセリに会わない方がいいと警告を寄越しましたが……」
「知ってるよ。彼は全ての事情を話してから、桑島君と会わせたがっていたからね。桑島君の気まぐれで君が不必要に傷つくのは嫌だと言っていたし……後はまあ単純に、君が頻繁に出入りすることで人目につくのを避けたかったんだろう」
「そうですね……それは、不注意でした。向坂さんは今どこにいるんですか?」
「わからない。あの夜以来音信が途絶えている」
「生き延びてはいるんです。それはわかっている。でも、今の居場所が……」
「本当か? 向坂君は無事なのか?」
身を乗り出してくるので、クグチは伊藤ケイタに、向坂ルネの件と併せて、一度だけ向坂の姿を見かけたことを話した。
「ルネ君の件は痛ましいことだ」
でも守護天使のことまでは知らなかったと、伊藤ケイタは言う。クグチは喋った。
「でも、そんなことをしても無意味だったんです。どのみち太陽フレアが廃電磁体たちを消していたでしょう」
言いながら、そんなのは向坂ゴエイに憎まれたくないがための言い訳だ、とクグチは思う。
「僕はね、廃電磁体たちが消えてなくなってしまったとは思っていない」
伊藤ケイタは優しく話した。
「変質して見えなくなっただけだと思っているよ。かつて電磁体たちが、磁気嵐の特殊な磁場の中で変質して生き長らえたように、また姿を変えたんだ。一回目の大規模フレアで消えなかった電磁体たちが、二回目の大規模フレアで消え失せる理由は特にない」
「でもこの次には超規模フレア
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ