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Magic flare(マジック・フレア)
第7話 壊レタル愛ノ夢(前編)
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技研と距離を置きたがった。それでどうしてわざわざ、ACJなんかに転職したと思う? 設備の面でも、研究の質の面でも大きく劣る一民間企業にだよ」
「ACJなら、国防技研へのパイプが通じているからですか?」
「そうだね」
 つまらない部署でくすぶっている。
 そう向坂と強羅木のことを評した時、それが安全だからとハツセリは言った。
 まさかスパイの真似事を? ACJの運用や研究の内容を盗み出しでもしていたのか?
「向坂君は桑島君を連れて国防技研を去った。それからしばらくの間、僕がここで彼女を預かっていた。それで、一緒に暮らしてみてあることがわかったんだ」
「何ですか?」
「ハツセリちゃんに乗り移った桑島君の記憶は完全ではなかった。今でこそ、若い子ならね、みんな生まれた時かごく小さい頃に守護天使を与えられている。だけど当時は、電磁体が守護天使として商品化されてからせいぜい数年。桑島君の守護天使が彼女になりきるには時間が足りなかった」
 彼は少しためらった。
「彼女、桑島君の守護天使は、明日宮君のことを強く記憶していた。桑島君は彼女を愛していた」
「ええ、知っています。ハツセリから聞きました」
「明日宮君が妻子を裏切るようなことはなかったからね。彼の名誉のために、それは言っておくよ」
「ありがとうございます」
「だけど、桑島メイミが明日宮エイジを愛していたとしても、愛の記憶を守護天使が引き継いでいたとしても、その守護天使は、明日宮君のことを知らないんだ。彼は何年も日本に帰らずに、Q国で亡くなったから」
「……ええ」
「愛の記憶は、桑島君の守護天使にとって、唯一自分の人間性を証明するものだった」
「人間性」
「電磁体は明日宮エイジの記憶を欲した。欠けてしまった、桑島君が本来持っていた記憶を補完する必要があったんだ。それが、人間に宿る電磁体としてじゃない、人間として生きる方法だと、桑島君の守護天使は言った。この人間の肉体に、本来育つべきだった人格に教えてやれる唯一人間らしいことだと桑島君は言ったんだ」
「でも、どうやって。父も桑島さんも亡くなった」
「だから君に会った。君が明日宮君の面影を残していることを期待して」
 クグチが乾いた笑いを漏らした。
「似ていないと言われましたよ」
「そうでもないと僕は思うね。照れ隠しで言ったんじゃないかな。現に、南紀で君に会ったのをきっかけに、桑島君の守護天使は……だんだん生前の桑島君の振る舞いに似てきたんだ。よほど強い刺激だったんだ。南紀で君に会ったのが。守護天使は桑島君から引き継いだ彼女の生前のパーソナルデータから、かき集めた明日宮君についての情報をもとに、桑島君がなぜ彼を愛したのか、どのように愛したのか、演算を始めた。結果としてそれが、引き継げなかった桑島君の人格や性格の補完にもなり」テー
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