気高い恋
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い。このエーデルワイスは私への贈り物だったんです。今それがわかりました」
そう言ってゆっくりと前へ出た。そしてペーターのすぐ側に立った。
「ペーター」
それから彼の名を呼んだ。
「有り難うね。私の為に」
手をエーデルワイスに近付ける。
「その為にこんなことになって。けれどね」
花を手にした。
「有り難う。有り難く受け取らせてもらうわ」
「エヴァ」
彼の両親はそれを見て思わず彼女の名を呼んだ。その時だった。
「エヴァ?」
不意にペーターが彼女の名を呼んだ。そしてそれだけではなかった。
「そこにいるのかい?」
「ええ」
彼女はそれに答えた。すると奇跡が起こった。
「よかった」
何と目覚めたのだ。その瞼をゆっくりと開いたのだ。
「ペーター」
エヴァはそれを見て信じられないといった顔をした。
「起きたの!?助かったのね」
「助かった?何が?」
だが彼は自分がどういった状況にあったのかよくはわかってはいなかった。いささかとぼけた声を出した。
「僕が一体どうしたんだい?」
「何でもないの」
彼女は微笑んでそう答えた。
「けれどね」
「けれど?」
「この花」
手に持つエーデルワイスを彼に見せた。
「有り難うね。有り難く受け取らせてもらうわ」
「勿論だよ」
彼はそれを聞いて快く頷いた。
「その花は君の為に摘んできたんだ。是非受け取ってくれよ」
「わかったわ。それじゃ」
「そしてね」
彼はまた言った。
「何?」
何を言われるのかわかっていた。だがエヴァはそれでもあえて問うた。
「よかったらね」
「うん」
「僕と・・・・・・」
ペーターはここで言葉を一瞬詰まらせた。
「貴方と?」
「本当によかったらだけれど」
「ええ」
「結婚・・・・・・してくれないかな。何時までも一緒にいたいんだ」
「いいわよ」
断るつもりは最初からなかった。手に持っている花がそれを許さなかった。エヴァはにこりと笑ってそれに頷いた。それで決まりであった。
揺らぎかけた恋を結びなおしたのはエーデルワイスであった。だがそれを運んできたのは他ならぬペーターであった。気高い行為が一つの恋を成就させた。バイエルンに古くから伝わる話である。
気高い恋 完
2005・6・30
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