気高い恋
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ーターが床に伏していた。
「ペーター」
返事はない。死んだように眠っていた。エヴァの言葉にも応えようとはしない。不安になった彼女は隣にいる彼の両親に顔を向けた。見れば彼は父親によく似ていた。
「あの、叔父様叔母様」
エヴァにとって二人は幼い頃からよく知る顔であった。話し掛け易かった。
「ペーターは」
「やあエヴァ」
ペーターの父が彼女に顔を向けてきた。
「よく来てくれたね。どうも有り難う」
「はい」
彼女はそれに応えた。だが不安は消えてはいない。さらに声をかけた。
「それでペーターは」
「とりあえず磨り傷とかはないよ。骨も折れてはいない」
「そうですか」
それを聞いてとりあえずはほっとした。
「けれどね」
だが彼の父はここで声と顔を暗転させた。それを見たエヴァはまた不安になった。
「意識が戻らないんだ。頭を強く打ったらしくて」
「えっ」
「お医者様にお見せしたところ何処も異常はないっていうけれど。ただ目が覚めないんだ」
「そんな」
「どういうことかわからないんだ。お医者様も首を傾げておられた。これはどういうことだろうって」
「どうすればいいのですか?」
「それはわからない」
彼だけでなくその妻も首を傾げてしまっていた。
「私達にできることがあればいいのだけれど」
「そうですか」
「ただね、一つ気になることがあるんだ」
「気になること」
「ああ。これを見てくれ」
彼はここでベッドの毛布をめくりペーターの身体を見せた。見れば彼はその手に白い花を持っていた。それは一輪のエーデルワイスであった。
「エーデルワイス」
「どうしてもこれを手放そうとしないんだ」
彼はいぶかしがりながらそう述べた。
「わからない。これはどういうことなのか」
「そうなのですか」
「さっきまではあんたの名前を呼んでいたけれどね。何故かあんたが来るとぴたりと止んだ」
「私が来ると」
「そうなんだ。これはどういうことなんだろう」
彼はまだわからなかった。しかしエヴァにはわかっていた。彼女は言った。
「叔父様、叔母様」
「?何だい」
「どうかしたの?」
二人は彼女に顔を向けさせた。そしてエヴァを見る。
「私にはわかっています」
「わかっているのかい?」
ペーターの母は心配そうな顔でエヴァを見ていた。
「何でペーターが起きないのか」
「はい」
彼女は毅然とした声で答えた。
「ペーターはあの高い岩山に登ってこのエーデルワイスを取ったんですね」
「ああ」
「そうだよ。あんな危険な山をね。どういうわけだか知らないけれど」
「それは私の為なんです」
「あんたの」
「は
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