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朝の物語
第二章
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第二章

 朝起きて学校に行く。たったそれだけのことなのに。最近私がおかしいように思えるの。
「行って来ます」
「はい」
 お母さんに挨拶を受けて家を出て駅に入る。家は商店街にあるからすぐなの。
 駅まで行っていつもの電車に乗って。さあ、また勝負ね。
「今日もいるかしら」
 電車に乗る時に一人呟く。そうしてあの駅に近付く。
 あの駅で彼を見る為にあえて立って扉のところにいて。席は空いてるけれどそんなことはもうどうでもいいの。彼を見る方が大事だから。
 その彼のいる駅に来て。いるのかいないのか。この瞬間が一番気懸かり。いないとそれで一日が終わっちゃうから。いつも願うわ。頼むからいてって。
 プラットホームが見えてきて。それで目の前にいつもいるのだけれど。
 いたわ。ほっとして何だか嬉しくて。そんな気持ちだけれどそれはあえて顔には出さないで。知らない顔をして見ているだけ。見ているだけだけれどちゃんと見ているんだから。
 見てると向こうは知らない顔。けれどそれでいいの。私はこれで満足だから。一日がこれで報われた気持ちになるの。朝だけの話なのに。

 今日も会えた。それだけでいいんだ。
 いつもこの扉の前にいてくれるから会える。僕のことなんてきっと知らないし僕も言葉を交わすあてはない。けれど顔を見られるだけでいいんだ。彼女の顔を。僕はそれだけで満足できるから。本当のことを言うとそれだけじゃ満ち足りないけれどこれでもいい。とにかく彼女の顔が見られればそれでいいんだ。
 ちらりと見てそのまま向かい側の扉のところまで来て立っている。本でも読みながら彼女の顔をちらりちらり。それだけだけれどいいんだ。
 自分の学校の側の駅まで来ると電車を出てそれで終わり。たったそれだけ。けれど満足して学校に行く。後はもうどうでもよかった。
 学校は何も変わったことはない。いつもの授業にいつもの仲間。変わりはしないけれどそれでもこれまでとは違っていた。
「何かさ」
 クラスメイトが僕に声をかける。
「御前変わった?」
「何が?」
「いやさ」
 そう僕に声をかけてきた。
「身だしなみとか奇麗になったし」
「そうだよな」
「そうかなあ」
 とぼけるけれどそう言われた理由はわかってる。彼女を意識してそうした格好になってるって。自分ではしっかりとわかってる。
「ああ、何となくな」
「格好よくなったよな」
「だったらいいけれどね」
 苦笑いを浮かべたけれど心の中では違っていた。
「もてたらいいな」
「クラスの女の子達は結構言ってるんじゃないのか?」
「なあ」
「それもいいけれど」
 ここであと少しで言うところだったけれど。慌ててそれを止めた。
「いや、何でもないよ」
「そうなんだ」
「うん。けれどさ」
 格好よくなった
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