暁 〜小説投稿サイト〜
SAO−銀ノ月−
第短編話
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「ピナー! 行くよー?」

 店内に入ってすぐに、自分の肩の上から飛びだしていった青い小竜を呼び戻すと、シリカは慌ててリズベット武具店から飛び出していく。

 ……終始慌てていたからか、結局シリカは気づくことはなかった。店の奥、様々な修復待ちや素材などが雑多に積み上げられている中に、黒いスプリガンが横たわっていることを。わざわざログアウトしないように調整し、麗らかな春の光と瓦礫の山に照らされて睡魔に屈している。

「……zzz」

 ……少し時間を遡ると。春の陽気に誘われたキリトは、近くにあったリズベット武具店へと入り、その時はまだ店内にいたリズに許可を貰うと、店の奥にハンモックを設えて睡眠に入った。リズが店から出る時もそのままであり、仕方なく店員NPCに任せてリズは外に出て行った。

 そしてシリカとともに来訪したピナは、誘われるように寝ているキリトの元に近づいていき、ハンモックと瓦礫が結んである場所に着地した。結局、ピナがその場にいたのはほんの少しだったが、接続部分に着地されたハンモックへのダメージは深刻で。

 まあ要するに、キリトが寝ていたハンモックは崩壊した。

 そのまま床に落ちる――かと思えば、幸運にも素材や盾が坂のようになっており、ゴロゴロとキリトは瓦礫から転がり落ちていく。勢いを失って店の中央で止まりはしたが、キリトはそのまま床で眠ったままだった。

「おーい、ショウキよーい」

 そして不幸にも、次の客は冷やかしに来たクラインであり、床に寝転んだままのキリトを見てどうするか。それは考えるまでもなく決定された。

「マジックマジック……よっしゃ」

「zzz……」

 どういうことかアイテムストレージにあったマジックを取り出すと、クラインはやはりキリトの顔に芸術を施していく。

「やっぱ肉は鉄板だよな……あとは浮気野郎、と」

 好き勝手な芸術が顔に施されていくが、キリトに起きる気配などまるで感じられない。春眠暁を覚えず、というのはよく聞く話ではあるが、これでは暁どころか何も覚えられないのではないだろうか。と、クラインがキリトの髪の毛をちょんまげにしたところで、店のドアがガチャリと開いた。

「クライン……?」

「シッ! 静かにしろよショウキ、今良いところなんだからよ」

 現実の用事を済ませていたために、今日は遅れてログインしていたショウキが最初に見た光景は、ちょんまげのキリトの顔に赤いマジックで『浮気野郎』と『肉』と書かれていた光景だった。まるで意味が分からない。

「マジックだけじゃなぁ……おい、なんか持ってねぇか?」

「……さっきエギルに押し付けられたネコミミなら」

 事態が把握できないながらも、ショウキは正直に赤いマジックをクルクルと回すクライ
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