第短編話
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わざ調べた訳じゃない、わざわざ調べた訳じゃない……)
――と、何故か心中で言い訳しつつ、翔希はどういう魂胆でこんなことを聞いてきたのか、ということを聞き出そうとする。
「……なんでそんなこと聞くのよ?」
「なんでって……単純に興味だな。教えられない理由でもあるのか?」
教えられない理由はない。単純に気恥ずかしいだけだ。……キスの格言自体を口にするのも、わざわざそれを調べた――じゃない、知ってると思われることも。そういうことなので、翔希が言ったことに乗らせてもらおうとしたが、先手を打たれてしまう。
「でも居合わせたひよりも知らないらしいから、女の秘密って訳じゃないだろうしな」
「おんっ……」
今まさに『女の子の秘密』と返そうとした時、そんなジャブをくらって何も言えなくなる。先日転校してきた彼女の――柏坂ひよりのふわっとした雰囲気を思い出し、確かに知らないだろうなぁ、と納得する。そして脱力する。
「あ、あたしも知らないのよねー」
「……さっきあんなに取り乱しといてそれはないだろ」
だよねー、あたしも自分事ながらそう思う。頬杖をかいた翔希の呆れ顔を見つつ、どうするかと思索を巡らせる。そこまでするなら教えてあげれば早いけれど……うん、それはやっぱり恥ずかしい。
「…………」
……しかし、翔希は言いたくなさそうなことを、無理やり聞き出そうとするような人物だっただろうか。そういうことを彼がする時は、大体あたしをからかって面白がっている時なわけで。
「翔希さ……あんた、知ってるでしょ」
「バレたか」
脱力しながら問うてみると、翔希は悪びれもせずにそう言ってのける。むぅ、と無意識に、あたしの口からそんなうなり声が出ると、翔希は小さく笑いながら「どう、どう」と馬にするようにあたしを制止する。
「悪い悪い。でもシリカにそう言われたのは確かだから、文句ならシリカまで」
あたしが口を尖らせているのを見て、翔希は慌てて珪子に責任転嫁する。珪子に対しての落とし前は後で考えるとして、このまま翔希に対してからかわれっぱなしと言うのは、あたし的にはとても負けた気分である。
と言っても、ここで『翔希はなんでキスの格言なんて知ってるわけ?』などと聞いてしまえば、『その質問はそっくりそのまま返す』とか言われて反撃をくらうのがオチだ。
先程咳き込んでしまったジュースを勢い任せで飲み干しつつ、机に空となった紙パックを置くと、ニヤリと笑って翔希に反撃の狼煙をあげる。翔希がペットボトルのお茶を飲んだタイミングを見計らい、あたしも質問を1つ問いかける。
「じゃあ知ってるならさ。翔希はあたしのどこにキスしてくれるわけ?」
……今度、飲み物で咳き込むのは翔希の番だった。
「ゴホッ、リズお前っ
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