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温泉旅行
温泉旅行(前編)
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旅行、それは楽しいものであって決して兄弟で行くようなものではないだろう。
仲が特別に良いのなら問題はない――はずだ。
けれど俺と兄りとの兄弟仲を知る者はまず、目を見開いてありえないと言って驚くだろう。
俺とりとは、誰がどう見ても仲の悪い兄弟な為2人だけで旅行をするという事自体をしない。
何故俺とりとが旅行に行くことになったのかと言うと、大体一週間前に遡る。

**

一週間前の今日、俺の机にメモが置いてあった。
学校から帰って自室で電気をつけ、ベッドやクローゼットの位置が把握できると、赤いブレザーを脱ぎ、ハンガーに掛けてクローゼットの中に仕舞った。
宿題でもしようかと制服姿のまま、パソコンを置くように買っただけの勉強机にあるイスに腰掛けて空いているスペースに鞄を置けば黄銅色の机の隅っこに白いメモがポツンと置かれていた。
自分で置いた気はしなかったので、一緒に住んでいる誰かなんだろうと思いつつ、俺が見ている側では真っ白で、手にとって裏返してみると文字が書かれていた。

『来週の今日、中央駅に来い』

それだけが書かれていた。
今日は金曜日な為、来週も平日じゃないかと思い、机に置いてある小さな三角のカレンダーを見ると、来週の金曜日は創立記念日で学校が休みだと思い出す。
これを書いたのは字体的にりとだと判断出来るが何故、普段部屋にも入って来ない兄がメモを置いたのだろうと不思議で仕方なかった。

「中央駅、なんでまた……?」

何故、中央駅に行かないといけないのだろうと思いながら俺はそのメモをゴミ箱に捨てた。


次の日何故かりとが俺の部屋に来た。
いつもなら互いの部屋に一歩も入らないのに何故かは分からないが、りとが俺の部屋に入ってきた。
それも学校で隣のクラスに居る友人に声をかけるかのように。

「恋也ー」

ノックもせずにガチャリとドアノブを回して、俺の部屋に堂々と入ってきた。
表情は不機嫌でも上機嫌でもなく、いつもと同じでドアを閉めて俺のベッドに腰掛ける。
その動作を見ている俺は何度も別人ではないかとりとを疑う。
俺の兄はまず俺の部屋に入らないし俺のベッドにも腰掛けない、そんな奴なのに今日の兄はいつもの様子が全くない。
本当に兄なんだろうか、どこかのそっくりさんではないのだろうかと思っている間にもりとは俺の部屋を見渡している。

「なぁ……」

遠慮がちに声をかけた。
俺は勉強机にあるイスに腰掛けていたので、声をかけるとりとは俺の方に向いた。

「ん?」

短く首を傾げるりとが異常にしか見えなくて、思わず顔を逸らしてしまう。
顔を逸らせばしまった、と思い怒らせてしまっただろうと思いりとの方へ恐る恐る向いてみるとりとは全く気にしていない様子でいる。
俺にとって今のりとは不思
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