第三十九話 式へと向けて
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「まだアベル帰ってきてないのか……」
オジロンさんが用意してくれた部屋の机で行儀悪く頬杖をつきながら私は呟いた。
早朝アベルを見送った後、二度寝して起きてご飯食べた後は部屋の模様替えをしたりゲレゲレに乗って城庭を回ったりアベルの従姉のドリスと城下町に遊びに行ったりして暇をつぶしていたけど、流石にやる事やりたい事が無くなってきた。
ホント、ゲームしてると時間ってあっという間に過ぎるんだなぁと痛感した私。
「デボラの家に遊びに行こうか、それともカジノで遊んでこようか」
あのチート特典『カジノ能力』だが私が発動しなくていいと思えば発動しなくなるというありがたい仕様があった。おかげで他のお客さん達に注目されることも柄の悪そうな男の人達に「ちょっと手伝ってくれ」と言われるようなことも無くなった。
それに私自身がカジノを普通に楽しめるようになった。(まぁ、カジノ以外使いようが無い特典だからこそオンオフ機能があったと思うのだが……)
そんな事を思いつつふと窓の外を見やると人影があった。窓に顔を近づけ凝視すると、間違いない。あの人影はアベルだ。
私はアベルを迎えに城門へと向かった。
*
「……という事があったんだよ」
試練の洞窟で起きたことをアベルが話し終えた。
「はぐれメタルに守ってもらってよかったじゃん」
「でもおかしななことがあるんだよ」
「何?」
アベルは一呼吸置いた後再び話した。
「あの洞窟は普段は兵士が入り口を守っていて次期国王しか入れないんだ。それなのに、盗賊達は洞窟の中に居た。しかも、王家の印を盗んでだ」
確かにそれはおかしな事だ。
「ラリホーだかメダパニだか知らないけど魔法をつかって入ったんじゃない?」
真っ先に思い当たる可能性を私は言った。
「でも僕と戦ったときにはその呪文を使ってこなかった。使えば確実に有利になる。あいつらがわざわざ兵士相手には穏便にすませるなんて考えられない」
「そう……。じゃぁなんだろうね」
しばらく二人で考えていたが結局答えが出なかったので私達は考えるのをやめ、戴冠式の準備に向かった。
*
「よし。王位継承に関する書類も引継ぎ事項も全て済ませた。もう大丈夫だ」
少しくたびれた様子のオジロンさんが薄く笑って言った。
「お疲れ様です、オジロンさん」
私は頭を下げて言った。
「ありがとう。でも休んでばかりもいられないからね。さて、神父さんと話しにいってくるか」
オジロンさんが部屋を出ると入れ替わるようにしてビアンカが入った。
いつもの動きやすい服装ではなく綺麗なドレスを着、頭にはティアラをかぶっていた。結婚式の時も思
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