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101番目の舶ィ語
第四話。甘い誘惑……
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た。
安堵して息を吐いたその時______

______ピピピピピッ

再び電話が鳴り響いた。

『もしもし私よ。まさか、高校生なのに車を運転できるなんて……でも無駄よ。
バックミラーを見てみなさい』

視線をバックミラーに向けると、ミラーの中にいつの間に車内に入ったのか、ボロボロのドレスを着た人形がちょこんと後部座席に座っているのが目に入ってしまった。
その人形は金髪の少女の姿をしていた。
その身には黒ずんだ霧みたいな、靄がかかっていた。

「うわっ」

慌ててブレーキをかけ、車を急停止させた。
道の端に止まっていた別の車の背部にガッと軽く衝突してしまった。
車が止まるとすぐに運転席から出て再び町中を走った。

なんなんだよ。
なんなんだ、あれは?

混乱しながら脚を動かし続ける。十字路を右に曲がり、すぐにある曲がり角を左に入ると、走るペースを速くした。
曲がり角にあるカーブミラーをチラッと見るとあの人形の姿が映っていた。

「クソ……」

先ほどの人形の姿は最近見た気がする。
思い出したのは、Dフォンで確認したあの人形。
あの一瞬だけでは確認できなかったが、そのドレスに赤い染みみたいなものが付着しまくっていたのはうっかり確認していた。
その赤い染みが一体なんなのか、は想像したくはないけどな。

______ピピピピピッ

『もしもし私よ。今、曲がり角を曲がったところよ』

俺の方向転換にもきちんと付いて来ている、という宣言とも取れる言葉だ。

『私の姿を見たわね?』

その言葉に心臓が凍り付きそうになるくらい驚いた。

『遠慮しないで……振り向いてくれればいいのに……』

その言葉に、甘くかけられたその言葉に我を忘れて振り向きたくなった。
俺は彼女に恐怖を抱いていた。
それなのに、その恐怖を与える張本人からの言葉が、とても甘い誘惑に聞こえた。
そう、このまま一気に振り向いて、その姿を確認し、心から安心したい、みたいな気持ち、になる。

大丈夫だって。単なる悪戯だよ。こんな現実あるわけないだろ?もしあったとしても、聞こえて来るのは女の子じゃないか。大丈夫、見ても平気だって。振り向いて、相手を確認する。たったそれだけでこの恐怖ともおさらばだ。

「えっ?あ、あっ??」

なんで俺はこんな事を考えているんだ?どうして俺は今すぐにでも足を止めて、背後を振り向こうとしているんだ?


大丈夫、気にするなっ!全然そんなの問題じゃないって。むしろ相手をちゃんと見て、それから対策を考えた方がいいに決まってるだろ。背中を向けていたら何をされても解らないじゃないか。な?
だから、振り向いちゃえよ。
一文字疾風。
ほら、足を止めて。






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