見える綻び、見えざる真実
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一手でもあるだろ」
珍しく軍師らしい意見に、斗詩はあんぐりと口を開けた。それだけ、郭図に対しての評価は斗詩の中で低い。
むっと顔を顰め、何か言いたい事でもあんのか、とチンピラのように食って掛かりそうになった郭図を、夕は手だけで制した。
「顔良。あまり郭図を舐めない方がいい。こんなクズでも袁家の一番上まで伸し上がった軍師」
「お前に言われると気持ち悪ぃからやめてくれ、吐き気がするぜ」
「褒めてない。クズが死ねばこの世界も綺麗になる。せいぜい“袁家”の役に立ってから醜く喚いて無様に死んで」
「誰も褒められたなんざ思ってねぇ。“袁家”の役に立ってからのたれ死ね、貧民出風情が」
行われる口げんかはいつもの事。軽く言い合っている中にどれだけの憎しみが隠されているのか斗詩には分からない。
ふいと横を見ると、明がにやけていた。瞳が冷たく濁っていた。ギシ、と小さく音がした事で、夕も郭図も、そちらを向く。
「で? どうすんのさ」
「……なんに於いてもまずは陣構築に重きを置くべきだわな。外部戦略が田豊の思い通りになるんなら、だが」
明の殺気に冷や汗を一つ垂らした郭図が言うと、夕がふっと笑みを零す。昏い暗い瞳を渦巻かせていた。
「七乃は裏切る。公路が可愛すぎて仕方ないから、あいつは袁家に従わないで何処かに隠してると思う。でも袁術軍の兵は幽州から動けない」
「対外的には裏切ってるそぶりを見せない為ってか?」
「ん、あいつは蝙蝠と一緒。勝つ方に着くだけ。長いモノに巻かれる部類。殺してもいいけど、裏切ってる間だけは信頼出来るから殺さないでもいい。七乃はこれからも使い道が多々ある」
例え何処に袁術を隠していようと……までは夕も言わなかった。
袁家と深く繋がっている郭図に教えてやる義理は無い。夕としては、自分達がこの戦の後にする事を思えば、勝ってから七乃が戻ってくる場所も残しておくべき、と。
――七乃の手腕は必須……上層部を皆殺しした後に。一人一人時間を掛けて、甘い顔で近づいて、利を与えると嘘を付いて、安心しきった所を絶望の底に叩き込む。明の食事場に私も行こう。お母さんに内緒で。
昏い願望だった。憎い相手の苦痛は甘美な果実だ。悲鳴を前菜に、血と臓腑と苦痛と絶望をメインに、夕も明と共にその狂宴を楽しみたいと望む。
母の命を救う手立ては見つかった。最大の敵を取り込めるとなれば、捜索と同時進行で内部改革も進められる。未だに華佗の身柄は抑えていないが、官渡の戦いさえ終われば、他の大地を燃やしてでも探し出すつもりであった。
「……そうかい、あの異常者に関してはお前の意見を採用してやる。じゃあ……烏巣の方はどうするよ」
一寸の間。郭図の目が細められ、ため息を吐いた。
何かがおかしい、今度は斗詩
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