見える綻び、見えざる真実
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そんなもん作ったのか」
すげぇな、と頷いた猪々子に呆れの視線を皆が向けた。童の感想ではあるまいし、というように。
「……な、なんだよ?」
「べっつにー? それよりあんた、ちょっと天幕の周り見ててくんない? 人に聞かれたくない話するからさ」
「兵に任せとけばいいだろ」
「あんたに行って欲しいの、軍議するには邪魔だし♪」
「じゃっ……邪魔っておいこら明――――」
「はいはーい、めんどくさいからバカは外ー♪」
「ちょ、バカバカってお前らいっつも――――」
「いったぁ……怪我してんのに、痛いじゃんバカ」
「あ、ごめ……」
「もう! 黙って外でいい子にしてなっ!」
ぐいぐいと身体を押しやりながら、明はわざと怪我の件を使って猪々子を外に追い出した。
寂しそうに中を見つめる猪々子の視線は斗詩に向けられるも、さっと目を逸らされる。がーん、と大仰にショックを受けた猪々子の表情を最後に天幕の入り口が閉められ、中に残ったのは四人。
「まあ、これからの戦に単純バカの意見はいらねぇわな」
「ん、真っ直ぐ勝てるなら最初から全兵力で押し切ってる。とりあえず続き」
机上に広げられた地図を指で二回弾いた。並べられた駒は黄色が二つ、白馬には……無かった。
「長距離兵器があるなら官渡攻略には移動櫓が使えない。使うなら中に入って兵器を壊して来るのが大前提。敵将が皆集まってるから侵入は到底無理だけど」
「……櫓を壊す為に瓶よりもっと大きなモノを飛ばして来るって事?」
「さっすが斗詩♪ どっかのバカとは違うねー」
「明、茶化さない」
緩く言い放った明をぴしゃりと咎め、夕は郭図に視線を向ける。
「城壁の上から飛ばして来るなら石だと思うけど、どう?」
「だろうな。船と違って固定されたもんなら、俺らの使おうとしてる新しい攻城兵器も狙い撃ちにされるだろ。元から城の周りに杭を打ちつけられてるから櫓もアレも近付けねぇが」
「飛ばせる範囲がどれだけなのか分からないのも怖いですね」
「通常の攻城戦をするしかないって事かー……めんどくさ」
は、とため息をついた明。此処までなら、普通の感覚を持つモノが行き着く答え。夕と郭図はその先を見ていた。
「……わざわざ見せたって事は他にも兵器があると考えていい」
「え……?」
斗詩は夕の発言にキョトンと目を丸めた。対して明は、なるほど、と一つ頷いた。
「バカが、たかが延津の戦を掻き乱す為だけにそんな使える兵器を引っ張り出すかよ。これは牽制と思考誘導だ。頭の悪ぃ奴等には普通の城攻めしか手が無いと思わせて攻めさせ、他の兵器か事前に仕掛けた罠や策で兵数を一気に下げさせる。俺らみたいな軍師に対しては攻めるのを躊躇わせて時間を使わせる。内部意見の食い違いを謀り、不和を齎す
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