見える綻び、見えざる真実
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で平穏な世を作れるのなら、世界を捻じ曲げる大嘘つきになってやろう……記憶が消えてしまったのは、そんな弱さを貫いたから。
「……黒麒麟はやっぱり俺と同じだよ。お前さんらが羨ましくて、皆が生き残って欲しくて仕方ない」
押し付けだろう。傲慢で愚かしい。
空を見上げると、蒼天が広がっていた。
「だってさ……一回死んじまってんだ」
宙に溶けた呟きを聞いたモノは居ない。泣きそうな声で、哀しい声だった。
――……一度きりの人生を謳歌してる人達の為に願いを映してたのが黒麒麟なら、皆の心を映す空のようなモノだったらいいなぁ……
心の中だけで呟いて、彼は楽しげに笑う彼女達から目を切り、一人背を向けて歩き出した。
嘗ての自分と同じ願いを胸に宿して。
回顧録 〜オワラヌサイエンノハテハ〜
一度目は戦で死んだ。
二度目も戦で死んだ。
三度目は暗殺された。
四度目は行方不明になった。
五度目も戦で死んだ。
六度目も戦で死んだ。
どんな手立てを打とうとも
どれだけ頑強に構えようとも
彼女だけが助からない。
まるで死の運命からは逃れられぬと、世界が嘲笑うかのよう。
心が折れかけた。それでも、彼女の幸せが欲しかった。
七度目、初めて他の子が死んだ。彼女は生き残った。ただ、最後の戦でやはり死んでしまった。
他の子が死んだのだ。その事実が、彼女を失う時の哀しみよりも薄く感じた。
もう自分は、きっと壊れているのだろう。
大切な友のはずなのに、心を占める容量が足りなくなっていた。
涙は出た。哀しくもあった。なのに彼女を助けられなかった時の方が死にそうになった。
ホカノタイセツナダレカヲギセイニシテモ
しかし、この線を越えてはならない……そう心に誓った。
カノジョガスクワレレバソレデイイ
ダメだ。ダメだ。ダメだ。ダメだ。ダメだ。ダメだ。ダメだ。ダメだ。
脳髄を甘く麻痺させる欲求が
快感を伴って全身を駆け巡る。
気付いてしまった事実
次の世界でやってみようなんて……そんなバカな事をしていいはずがない。
出来る限り一人でも多くを助けて
一人でも多くと、彼女との幸せを掴むのだ。
そうでなければ……自分は何の為に戦っている?
八度目、無意識の発露か、また他の子が死んだ。やはり彼女は生き残った。でも最後の戦でまた死んでしまった。
もう少し
もう少しだった。
なのに何故、あんな所で……
二回とも紅い髪をした鬼に
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