見える綻び、見えざる真実
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の為に戦っているのだろう? なら、もう一度だ。私を倒すまで、何度でも、何度でも、な」
冷たい声には一切の感情が含まれておらず、其処には、華琳の敵を打ち砕く武の大剣がいた。
立ち上がろうとして、膝が折れた。剣を杖として立とうとしても、片手では出来なかった。
「立て」
つかつかと歩み寄る春蘭の言葉は鋭い。
もがいても、足掻いても、秋蘭は立ち上がれない。
「立てっ」
苛立ちからか、眉間に皺が寄っていた。
上から降ってくる怒声に、笑みを深めても立ち上がれない。
「立てっ! 夏候妙才っ!」
グイ、と胸倉を掴みあげられ、無理やり身体を上げられた。
震える脚で、震える膝で、どうにか秋蘭は立った。
「姉者……」
秋蘭は笑っていた……泣きながら笑っていた。
何も語らず、言わずの二人。そのまま彼女達は互いに目を合わせるだけであった。
幾分、離れた所で見やっていた霞に疑問が向けられる。
「どうして……春蘭様はあのような事を?」
凪が苦々しげに問いかけ、一つ吐息を吐いた霞は歯を見せて笑う。
「ははっ、分からんか。重さとやり方の違いや」
「重さとやり方?」
「せや。秋蘭があのクソ女と一騎打ちしたんやろ? なら下手し死んどったで。たまたま目的が違ったから殺されへんだだけや。
華琳の為にー、て言うけど……今回はそれで秋蘭が死んでたら意味あらへん。それにな、負け戦で生き様を証明するもんでも、主に命じられたわけでもあらへんのに、秋蘭は欲を優先しよった。それのどこが華琳の為になるんや……って春蘭は怒っとるわけやな」
そんな事の為にあそこまで……と言い掛けて、三人共が口を噤んだ。
自分達には分からないナニカがある。そう読み取って。
「って、ウチは思うとるんやけど、秋斗はどう思う?」
じっと何も話さず、ただ春蘭と秋蘭のやり取りを見ていた秋斗に、霞が楽しげに問いかけた。
「……同意かな。許緒が怒ったらしいけど、元譲が元譲のやり方で妙才に突き付けないとダメだと思ったんだろ。二人には二人の絆があるだろうし好きにやらせればいいさ。
重さってのは命の重さ、名の重さ、向けられる想いの重さ……いろんなもんがあるんだろうけど、曹操殿の為を想うなら、妙才が死ぬ方が問題だった。やり方は……多分あれじゃないか? 霞と元譲の一騎打ち、それが燻ってたんだろ」
「せやな。双子言うても力も武器もちゃう。やり方もちゃう。それでも姉と並び立つには、一騎打ちで自分も華琳の為になる人材を捕えたかった。意地張って譲れへんかった。くくっ、秋蘭も春蘭やらウチと同じで、根っこの方はバカや、バカ」
楽しげに語る霞に、秋斗は眉根を寄せた。
「元譲と妙才だからこそ起こった事だと思
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