暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン ≪黒死病の叙事詩≫
≪アインクラッド篇≫
第一層 偏屈な強さ
閉ざされた世界の英雄
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苦しんでいる。そういうことだろう? それは、それはとても大事なことだ。彼の死は取り返しのつかないことで、贖罪なんてできないことなのかもしれない。でも、それでいいんだ」

 そう、それでいいんだ。罪悪の意識に苦しむかもしれない。無罪の理由が受け入れられないかもしれない。理性とはそういうもんだ。そうあるべきなんだ。

「君に出来ることは、悔いること。たったそれだけで、それだけで十分なんだ。戦争ってのは免罪符にされやすい。無罪の札に甘えないでいることが、せめてもの――」

 せめてもの、なんだ? 贖罪でも免罪符でもないなら、それは……。

「せめてもの、≪手向け≫。死に意味を持たせてやることが、彼らの誇りになる。それは俺にも言えることだが、な」
「……貴方は、私とは根本的に違うみたいね。まるで別の時代の人みたい。……私には輪郭でしか貴方の理屈がわからないわ」
「あー、そういうのには慣れてる。君は変なところで命を張るんだねって、よく言われたよ」

 失敗したかと落胆する俺の横で彼女は立ち上がり、数歩前に出て俺に背を向けたまま視線を上空へ投げる。大きな呼吸音の後、彼女は気丈な声を張って言った。

「でも参考になったわ。そうよね、こんなところで立ち止まってちゃ闘った意味がないよね。強く振る舞うことは簡単で、闘い続けるのは難しい。でしょ?」

 彼女の様子に安堵の息が漏れる。安心した俺は言葉を選ばずに自然にひとつだけ話した。

「気に入ってくれて、なによりだ。――それは俺の生き様でもあるんでね。大事にしてくれ」

 俺が投げた声に彼女は唐突に不自然な様子で静止し、数秒後、振り返った。顔は無表情だった。その顔が俺に聞いてきた。

「生き様……。ねぇ、貴方は一体何者なの?」
「……」
「私は一時期、貴方がビーターだと思ってたわ。辺鄙な武器ジャンルである≪手甲剣≫は新規プレイヤーが持つ武器とは到底思えないのよ。その武器をメインにしていたプレイヤーはベータには一人もいなかった。ゲームオーバーが死へと繋がらない時代でも、それを使いこなすプレイヤーはいなかった。ましてやボス戦では一度も見たことがないわ」
「成程、だからアルゴがこの武器については疎かったんだな。需要も提供者もないんじゃあな」
「……それにレベルもおかしい。高すぎるわ。確かに現段階においてレベル十三とレベル十二には大きな溝があるけど、どれだけMMOが得意でもその武器でそのレベルはハッキリ言って異常だわ。ギアくんのレベルを見ればよく分かるわ。ソロプレイ片手剣という効率重視のスタイルで、彼のレベルは十だった」
「案外、上には上がいるもんだ」
「……他MMOでの上位層は無謀な攻略で死んでいったわ。聞いたでしょう? 戦闘で死んでいったプレイヤーの殆どがベータの情報を持たない
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