第二部 vs.にんげん!
第27話 くそやろう!
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とした時だった。振り返らなくても声でわかった。エレアノールだ。
ウェルドは柄から手を離し、肩を竦めた。
「どうする? 四対三になったぜ」
男達の表情が渋くなる。大きな騒ぎにするつもりはないようだ。
武器を納めた。
「……遺跡の中で会えるのを楽しみにしてな」
背を向けて去っていく男達に、ウェルドは憎々しげに吐き捨てた。
「あばよ!」
ノエルが大きく安堵の溜め息をつく。エレアノールが雪を踏んで走ってくる足音が聞こえた。ゆっくり振り返った。ディアスが喧嘩っ早さを咎めるような、呆れ混じりの視線を寄越したが、無視してノエルの顔を覗きこんだ。
「大丈夫か? 何もされなかったか?」
「ええ。……手は出されなかったから」
そう答えると、顔をさっと赤らめてうなだれた。
「ああ、みなさん、ご無事でよかった」
エレアノールも、冷たい風で頬を赤くしながらやって来て言った。
「悪ぃな。でも助かった」
「私は何もしていません。ただあなた達を探していたんです。忠告をしなければと」
「忠告? あの連中のこと?」
「違います。ネリヤという女性冒険者のことです」
ウェルドは眉を片方上げた。
「ああ、あの人。どうかしたのか?」
「遺跡内で度々姿をお見かけしていたのですが……まるで誰かを捜しているようで……その方が同期の冒険者を遺跡内で殺害なさったと」
「げっ」
「紫の剣で恋人とご家族を失ってから様子がおかしいという噂は聞いておりました。それが、理由もわからず……生き延びた同行者の方の話では、遠方から矢で射られ、その一撃で溶岩に落とされたとの事です」
ウェルドは唇を真一文字に結び、馬鹿みたいに頷きながら動揺を堪えた。その不運な同期の冒険者とやらが殺害された理由はネリヤ本人にしかわかるまい。本人にもわからぬかもしれない。だが、彼女の本当の狙いが恋人を殺した自分達である可能性は充分すぎるほどある。
「わかった」
ウェルドは頷くのをやめた。
「ご忠告をどうも」
「先ほどの件もあります。遺跡の中であなた方だけで行動するのは控えてください」
エレアノールは続けた。
「先ほど、パスカとジェシカとルカの三人とすれ違いました。第二層の光の塔、もしくは闇の塔のどちらかに行かれるとのことです。あの辺りは敵がさほど手強くない割に、等級のよい財宝が見つかりますから。急げば入り口で合流できるでしょう」
「ありがとう」
ウェルドは愛想笑いを浮かべた。
「どうも」
ウェルド、ノエル、ディアスの三人が遺跡に吸いこまれていくのを、物陰から見ている男がいた。三人は通路の闇に紛れ、見えなくなった。
男は踵を返した。
教会へ。
神に用があるのでも、司祭に話があるのでもなかった。男はまっすぐ地下の不良冒険者の溜まり場に向かった。
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