もう一つの運命編
第1話 「ひとり」と「ふたり」
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人で見つけてみせる」
すらり。巴は腕を上げ、光実を――光実の後ろにある装置を指差した。
「その時にこそ、わたしたちはこの部屋をブチ壊しに来ます。憶えておいてくださいね」
一方的な宣戦布告をして出ていった巴たち。
ホールに残された光実は、装置を置いた台を力任せに殴った。
自分が一人ではないことを見せつけるためだけに、巴は光実に会いに来た。巴は独りぼっちの光実を嘲笑いに来た。光実にはそうとしか解釈できなかった。
(確かに僕は独りだよ。兄さんも碧沙も裕也さんも、もう僕のそばにはいない。だからってわざわざ傷に塩塗るような真似しに来なくったっていいじゃないか!)
ふいに光実の脳裏に、一人の少女の面影が閃いた。
――高司舞。光実が一番に恋しく思い、憧れる、輝くような女性。
(そうだ。僕には舞さんがいるじゃないか。僕だって独りなんかじゃない。舞さんさえ隣にいてくれれば、僕は何だってできる。どんな困難だって乗り越えられる)
光実はホールを出た。薄暗い部屋にずっといたせいで、廊下に出るやLEDの灯りが目を焼いたが、すぐに慣れた。
ヘルヘイムの植物が敷き詰められたように生えた廊下を歩き出す。胸には言い知れない高揚があった。
(今迎えに行きます。待っててください、舞さん)
ユグドラシル・タワーを出てすぐ、巴は脱力してその場にしゃがみ込んだ。
「トモっ」
「すい、ません。大丈夫です。緊張の糸が切れただけ……」
初瀬が巴の両肩に腕を回した。
「――震えてんじゃねえか」
苦笑でしか応えられなかった。正直な所、いつ光実が龍玄に変身するか、あるいはオーバーロードを呼び出すか、分かったものではなかったのだ。
それでも、言葉にしておきたかった。同じく「碧沙のため」を理由に努力する光実だから。
「ありがとう。亮二さん」
「俺、何もしてねえだろ」
「亮二さんがそばにいると思ったから言えたんです。だから、亮二さんのおかげです」
初瀬は苦い顔をした。感謝が上手く伝わっていない。巴は本当に初瀬のおかげだと思っているのに。
「立てるか?」
「はい。そろそろタワーから離れたほうがいいかもしれませんしね」
初瀬に支えられながら、巴は立ち上がった。
初瀬がロックビークルを取り出し、投げる。ローズアタッカーが展開された。初瀬がそれに跨り、巴は初瀬の後ろに乗って彼の胴に両手を回して掴まった。
「あ、そうだ。帰りに商店街寄っていいか? この分だと長期戦になりそうだからな。食糧確保しとかねえと」
「いいですよ。お願いします」
律儀にも初瀬は商店街のアーケード入口でローズアタッカーを停
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