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逆説ロミオとジュリエット
4部分:第四章

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第四章

「これが僕の名前です」
「ロミオ様というのですね」
「はい、それで貴女は」
「ジュリエットです」
 今度は彼女が名乗った。
「宜しくお願いします」
「そうですか。ジュリエットというのですか」
「そしてロミオ様なのですね」
 二人はそれぞれ言葉を交えさせた。
「貴女の様な方ははじめて見ました」
「はじめて?」
「そう、はじめてです」 
 ロミオはジュリエットを見上げながら答えた。
「本当に」
「私もです」
 ジュリエットもまた月の光に照らされるロミオを見た。白い光に照らされる彼はだ。まるで幻想の中から出て来た神の使いの如くだった。
「はじめて見ました」
「あの、それでなのですが」
「はい」
「そちらに行って宜しいですか?」
 ロミオは胸を躍らせながらジュリエットに尋ねた。
「貴女のところに」
「私のところにですか」
「そうです」
 またジュリエットに対して告げた。
「貴女のところへ」
「はい」
 そしてであった。ジュリエットも頷いたのだった。
「是非。お願いします」
「是非ですか」
「はい、是非です」
 ジュリエットはまたロミオに告げた。
「御願いします」
「わかりました」
 ロミオは満面の笑顔でその言葉に頷いた。そうしてだった。
「今からそちらに」
「いらして下さい」
「よいのですね」
「申し上げました」
 こう返すジュリエットだった。
「ですから。どうか」
「わかりました。それでは今からそちらに」
「ロミオ様、いらして下さい」
 ロミオは今まさにそのジュリエットの傍に向かおうとした。しかしだった。
 ここでだ。庭に多くの人間の声がしてきたのだった。
「ロミオ様、こちらですか」
「まだここにおられてよかったです」
「本当に」
「あの声は」
 ロミオはその声がした方に顔を向けた。
「家の者達か」
「御気をつけ下さい」
「今妙な話を聞きました」
「ロミオ様に危機が迫っています」
「危機?まさか」
 危機と聞いてだ。ロミオも身構える。腰にあるその剣に手をかける。
「カプレーティの家の者達が」
「えっ・・・・・・」
 ジュリエットは一部始終をバルコニーから見ていた。それでであった。
「それは私のこと?」
「モンテッキィ家の跡継ぎを狙っているとのことです」
「ですからここは」
「御気をつけ下さい」
「刺客か」
 ここでロミオの目が鋭くなった。
「それなのか」
「その様です」
「ロベルドも来ています」
「間違いありません」
「ロベルドもか。あの」
 ロミオは彼のことを知っていた。無論いい意味において知っているのではない。彼の敵としてだ。それで知っているのである。

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