第七楽章 コープス・ホープ
7-6小節
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ってしまいました。
「すっかり嫌われ者だ」
わたくし以外いなくなったところで、室長が自嘲なさった。
「しょうがありませんわ。ルドガーに不都合な真実は伝えておりませんから。それとも今からクルスニクの因縁と呪いについて教えてあげます?」
「あいつには不要な知識だ」
「弟さんに嫌われても?」
「…………ああ」
意地張り屋さん。顔に「嫌われたくない」とハッキリ書いてましてよ? そういう所がユリウスせんぱいの魅力ですけどね。ほんと、愛らしいほど不器用な方。
「お久しゅう、でよろしいですかしら。ユリウス室長」
「だな。相変わらず室長補佐か、お前は」
「ええ、今はユリウスせんぱいでなくリドウせんぱいの、ですが」
「まさかそのポジション、あいつに取られるとはな」
「わたくしたちの居場所はどうやって突き止めましたの?」
ユリウス室長はポケットからGHSをお出しになりました。
「これの開発者が誰か忘れたか? 俺はマスターコードを知ってるんだ。お前のGHSのコードも登録済みだ。GPSでお前のGHSの座標を辿らせてもらった。リドウが馬鹿正直に俺をルドガーのいる世界に連れてくとも思えなかったんでな」
信用されてませんよ、リドウ先生。まあ結果として両者とも思惑通りに事を進めたのですから、ここはおあいこでよろしいかしら。ただ。
「わたくし、室長にGPSコードをお教えしましたっけ?」
「したぞ。いつかの家飲み会で。覚えてないのか? 機種変したからアドレス教えるついでにって」
「申し訳ありません。最近《症状》が進んでおりまして……」
「――無理はするなよ、と言っても聞かないんだろう?」
「ええ。聞けません」
わたくしが目指すエンディングのためには、多少の無茶無謀は避けては通れませんもの。
「! ジゼル!」
え? ……きゃっ。な、何ですの。急に引きずらないでください。どうして家の壁に隠れるんです?
「! あれは、精霊でしょうか?」
「少なくとも翅を生やして浮いて移動する人間を、俺は見たことがない」
「奇遇ですね。わたくしもです」
翅の精霊が通るだけで、道にいた村人さん方が慌てて拝礼する。畏敬より畏怖が濃い。怒りを買うまいと必死ですね。
「あの翅の精霊、村の中でも権威を持つ立場のようですね」
「この村における崇拝対象といったとこか」
翅の精霊が充分に遠くに行ってから、そっと家の陰から出る。
「気づいたか」
「時歪の因子の反応ですか。ええ。視認はできませんでしたが、気配は感じました。ルドガーも、骸殻能力者が近づけば反応が可視化しますから、気づくでしょう」
ルドガーはわたくしが指導するまでもなく、めきめきと探索エージェントとして
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