第2部 風のアルビオン
第4章 港町ラ・ロシェール
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物を連れて行くなんて、ダメよ」
ルイズがそう言うと、ギーシュは地面に膝をついた。
「お別れなんて、つらい、つらすぎるよ……、ヴェルダンテ……」
そのとき、巨大モグラが鼻をひくつかせた。
くんかくんか、とルイズに擦り寄る。
「な、なによこのモグラ」
「主人に似て女好きなのか?」
ウルキオラが言った。
「ちょ、ちょっと!」
巨大モグラはいきなりルイズを押し倒すと、鼻で体を弄り始めた。
「や、ちょっとどこ触ってるのよ!」
ルイズは体をモグラの鼻でつつきまわされ、地面をのたうち回る。
スカートが乱れ、派手にパンツをさらけ出し、ルイズは暴れた。
「楽しそうだな」
ウルキオラは微笑しながら言った。
「どこが!馬鹿なこと言ってないで助けなさいよ!」
巨大モグラは、ルイズの右手の薬指に光るルビーを見つけると、そこに鼻を擦り寄せた。
「この!無礼なモグラね!姫様に頂いた指輪に鼻をくっつけないで!」
ギーシュが頷きながら呟いた。
「なるほど、指輪か。ヴェルダンテは宝石が大好きだからな」
「嫌なモグラだな」
「嫌とか言わないでくれ給え。ヴェルダンテは貴重な鉱石や宝石を僕のために見つけてきてくれるんだ。『土』系統のメイジの僕にとって、この上ない、素敵な協力者さ」
そんな風にルイズが暴れていると……。
一陣の風が舞い上がり、ルイズに抱きつくモグラを吹き飛ばした。
「誰だ!」
ギーシュが激昂して喚いた。
朝もやの中から、一人の長身の貴族が現れた。
羽帽子に長い口髭が凛々しい。
精悍な顔立ちの若い男であった。
黒いマントの胸には珍妙な動物の刺繍が施されている。
「貴様、僕のヴェルダンテに何をするんだ!」
ギーシュはすっと薔薇の造花を掲げた。
一瞬早く、羽帽子の貴族が杖を引き抜き、薔薇の造花を吹き飛ばす。
模造の花弁が宙を舞った。
「僕は敵じゃない。姫殿下より、君たちに同行することを命じられてね。君たちだけではやはり心許ないらしい。しかし、お忍びの任務であるゆえ、一部隊つけるわけにもいかぬ。そこで僕が指名されたってワケだ」
長身の貴族は、帽子を取ると一礼した。
「女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ」
文句を言おうと口を開きかけたギーシュは相手が悪いとうなだれた。
魔法衛士隊は、全貴族の憧れである。
ギーシュも例外ではない。
ワルドはそんなギーシュの様子を見て、首を振った。
「すまない。婚約者が、モグラに襲われているのを見て見ぬ振りはできなくてね」
「ワルド様……」
立ち上がったルイズが、震える声で言った。
「久し
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