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逆説ロミオとジュリエット
11部分:第十一章
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第十一章

「これで」
「終わったとは」
「あの、お話がわかりませんが」
「貴方達が婚礼を結んだことで両家は親戚同士となりました」
 司教が話すのはこのことであった。
「そう、争う必要はなくなったのです」
「というと」
「まさか」
「はい、貴方達が二つの家に幸福をもたらしたのです」
「その通りです、ロミオ様」
「ジュリエット、よくやってくれた」
 ロレンツォとロベルドもそれぞれ出て来た。
「これで両家は結ばれました」
「もう争う必要はないのだ」
「話がわからないのだな」
「どういうことなのですか?」
「つまりです。もう誰もが争いに倦んでいたのです」
 話が全くわからない二人に司教がここで告げる。
「それで御二人を結ばせようということになりまして」
「それで僕達を会わせて」
「そのうえで」
「はい、それが見事功を奏しました」 
 司教は満足した面持ちで話した。
「御二人を騙すようで悪いですが」
「いや、それでも」
「私達は確かに愛し合っています」
 それは確かだと。二人は言う。
「しかしそれでいいのだろうか」
「何か。違う気が」
「いえ、これでいいのです」
「そうだ、確かに会わせたのは私達だ」
 釈然としない感じになった二人にまたロレンツォとロベルドが話す。
「しかし御二人が愛し合われて自ら婚礼を結ばれたのは事実です」
「それは確かなのだからな」
「そうなのか。それなら」
「私達はこのまま」
「左様です」
 司教はあらためて二人に顔を向けてにこりと笑ってみせた。
「ですから御二人はこのまま愛を紡がれて下さい」
「そしてそれが平和へとつながるのか」
「このヴェローナの」
「平和は剣によってもたらすこともできます」
 司教はまずは一つの現実を話した。強大な国力、武力を持っているならばそれによって秩序を維持できる。そういう意味での言葉だ。
「ですが」
「ですが」
「それ以上になのですね」
「はい、愛は確実な平和をもたらします」
 そうだというのである。
「ですから御二人はそのまま平和をもたらされるのです」
「それならジュリエット」
「はい、ロミオ様」
 二人は顔アを見合わせて互いに言い合う。
「これからは二人で」
「平和をもたらしましょう」
「それではだ」
 カプレーティ家の者達もモンテッキィ家の者達も出て来た。それぞれの家の主達もいる。誰もがその場に集まっていた。
「このはじまりを祝おう」
「愛のはじまり、そして」
「平和のはじまりを」
「幸せな婚礼のこの場において」
 こうしてロミオとジュリエットは結ばれヴェローナに平和が訪れたのだった。争いが終わりその先にあるのは。かけがえのない愛であった。


逆説ロミオとジュリエット   完

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